先日、このようなコメントをいただきました。
「こんにちは。
9月に入り、時間がないことを実感し始めた初秋です。合格発表後から、プレッシャーを感じ始めました。昨年よりも、早い梅雨入りならぬプレッシャー入りです。
試験合格レベルの学力をつけるのが一番大切ですが、それにも劣らず、メンタリティも大事だと気付きました。
プレッシャーを感じると逃げたくなるのが、人の生存本能なのかもしれません。
先生は、プレッシャーを感じるときに、どのように考え、行動していらっしゃいましたでしょうか。
ちなみに、錦織圭くんは、勝ちに行く気持ちで行けと言われ、それを支える自信は日々の負荷をかけた基礎練習だそうです。個人的に、法律に通ずるものを感じました。」
感じるプレッシャーの程度・内容は、主観である以上人それぞれだと思うのですが、私がプレッシャーに対してどのように戦っていたかという方法論部分は普遍的なヒントにはなるかもしれないとも思ったので、記事にしてみます。
0.「プレッシャー」とは何か?
まず、受験生である以上、少なくとも無意識的には、常に、①「落ちたくない」「負けられない」②「合格したい」「勝ちたい」といった気持ちを持っているはずです。
このような欲望というか、①マイナス方向だけでなく②プラス方向に働く気持ちも、自分をその方向に圧し進める力を持つ点で、少なくとも潜在的にはプレッシャー(圧力、重圧)になっていると考えておいた方がいいと思います。
ブラジルW杯サッカー日本代表でも、特に本田選手が、「目指すは優勝」といった(大きな)プラス方向の言葉を発していたことが、プレッシャーとなった感じがしませんでしたか?
1.「敵を知る」
コメントしてくれた方は、こういったプレッシャーを意識し始めたのが、合格発表後だということでしょう。
それで1歩前進です…「敵を知る」ことができたから。
上記のような様々な形でのプレッシャーをはなから否定してかかると、かえってプレッシャーが心の奥底で蠢いて育ち続けるのに対し、自分自身はそのプレッシャーに無防備なまま、本試験を迎えることになりかねません。
まずは、プレッシャーという「敵」を、真正面から見据えること…これをしなければ、目隠しで「敵」と戦うようなものです。
2.「己を知る」
そして、そのようなプレッシャーに対して、あなたはこれまで、どのような反応を見せていたでしょうか?
初受験の方は、これから受ける試験に向けたプレッシャーを感じることは初めてでしょうけれども、別の試験とか、あるいはスポーツ・ゲーム等ではどうでしたか?
…たとえば私は、「(a)普段の勉強では、プレッシャーに負けてやる気がなくなることが結構あるが、(b)本試験では開き直って(開き直りすぎて)戦えるタイプ」だということを、旧司H16までの受験生活で把握していました。
様々なタイプがあると思いますが、このように「己を知る」ことが、下記3のステップに進む前提として不可欠です。
これまでの経験や、自分自身との対話の中から、何となく分かる範囲でいいので、言語化してみてください。自分ですら、自分自身のことを完全には分かっていないものです(だからこそ、自分の知らない自分に“成長”できる余地がある)から、どうせ、これから試行錯誤していくことになります。
3.「己に克つ」
上記2で、私は、(a)普段の勉強では、プレッシャーに負けてやる気がなくなることが結構あるというマイナス面を持っていると考えました。
そのような私は、どのように戦えばよいのでしょうか?
…2通りの戦い方があります。
(1)そのような自分を変えるか、(2)そのような自分なりの戦い方をするか、です。
しかし、(1)はかなりの時間と労力を要する人が多いと思いますから、まずは(2)からやってみて、それでもダメなら(1)…という優先順位が適切な場合がほとんどだと思います。
そこで、まず、(2)(a)普段の勉強でプレッシャーに負けてやる気がなくなることが結構あるという“情けない”自分(こんなんごく普通なんですけどね…人間だもの)をありのままに受け入れる。
ただ、(a)やる気がなくなる期間を最小限にするための方策を、色々と模索・試行錯誤する…これが、(2)の戦い方の一例です。
司法試験系の受験戦争が1年近くの長期戦である以上、このような戦い方も、「己に克つ」方法の1つだと思うのです。
具体的には、私にとっては、まず、このブログを書いて自分の現状(プレッシャーも含めて)を言語化して吐き出し、客観視できる状態にするのが効果的でした。
それでもダメなときは、マンガ喫茶で長時間、様々なストーリーの世界に没入するのが効果的でした。おそらく、プレッシャーの及ばない、マンガのストーリーの世界という非日常まで一旦“逃げて”、自分の今いるこの世界をより遠くから客観視する機能があったのかなあ…と思います。
4.「百戦危うからず」
『孫子・謀攻』に、「彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し。」という言葉があるみたいです。
内部的なプレッシャーとの戦いにも、上記3を付け加えるアレンジをすれば、妥当すると考えています(というか、孫子は、「己を知れば」に己に克つことまで織り込み済みなのかもしれませんが)。
ちなみに、私は、「錦織圭くんは、勝ちに行く気持ちで行けと言われ」たというのは、決勝進出まではプラスに働いたとしても、決勝戦ではマイナスに働いたかもしれない…と思っていたりします。錦織選手自身、決勝でかなりのプレッシャーを感じていた旨を述べているようですから。
いずれにしても、「勝ちに行く気持ち」のとおりに勝ち進めたのは、日本人初のグランドスラム決勝進出するくらいの“強者”だからこそなんじゃないかなあ…と、“弱者”たる私は羨望(≒やっかみ)を込めて思ってしまいます。
私なんか、最終合格した旧司H17の論文本試験直前期に、「『受からなくてもいい、落ちなければ』。それどころか、今年落ちてもいいや、とさえ思う部分がある。」(記事「開き直り 」)という心境にまで日和ってたからね~σ(^_^;)
他方、「それを支える自信は日々の負荷をかけた基礎練習」というのは、司法試験系の過去問をくり返しくり返しくり返し解いて「完璧」にすることが「自信」になること(cf.記事「なぜ「完璧」にまでしなければならないか 」の5)に通じると思います。