Ⅰ 本問法律は、いずれも被選挙権を制限している。よって被選挙権が憲法上保障されていれば、これら法律の合憲性が問題となるため検討する。
1.被選挙権とは、選挙で選定されうる資格である。ここで公務員選定権(15条1項)は憲法上保障されており、選定の相手方を自由に選べなければその保障の意味がないから、被選挙権は公務員選定権と表裏の関係にあるものとして憲法上保障されていると解すべきである。
2.(1)この公務員選定権は、国政の最高決定権たる国民主権(前文1段、1条)の行使という性格を持ち、国家の命運を左右する重要な権利である。そのため、その自由な行使だけでなく適正な行使も要請されていると解される。
(2)また憲法は代表民主制を採用(43条等)して、国政の最高決定権が究極的に国民の権威に基づくという形を原則としており、公務員選定権はその例外的なものである。そして両議院議員の資格は法律で定めるとされている(44条本文)から、15条1項は全ての公務員の選定権を具体的に保障したものではなく、最終的に国民の意思を反映した選定がなされればよいと解される。
(3)さらに、被選挙権を年齢によって制限することは少なくとも明示的には禁止されていない。(44条但書)
3.したがって本問法律の合憲性が推定され、必要性・合理性が欠けない限り合憲となると考える。
Ⅱ 設問前段
1.まず、成年者は選挙権を行使できる(15条3項)にもかかわらず、それから一定の年数を経ないと表裏の関係にある被選挙権がないとされている点が問題となる。
(1)確かに公務員選定権をできるだけ自由に行使できるようにするという観点からは、成年者に被選挙権を認めるという制度の方が合理的かもしれない。
しかし代表民主制が採られ国政の運営に密接に関わる国会議員には、一般よりある程度高度かつ専門的な判断能力が必要とされる。
(2)よって、選挙権を何回か行使して国政に関わる中でかかる能力を養った者にのみ被選挙権を認めるということには、国民主権の適正な行使という観点から一定の必要性・合理性がある。
(3)したがって、この点では合憲である。
2.次に、衆参両議院で被選挙権に差を設けていることが問題となる。
(1)思うにその任期の差(45条、46条)から、衆議院は民意の忠実な反映、参議院は安定的な民意の反映を予定していると解される。これらを互いに抑制均衡関係におく(59条等)ことで、多様な民意を反映した統一的な国家意思を練り上げていくのである。
(2)とすると、年齢層による多様な民意を反映する必要性・合理性は認められる。
(3)したがって、この点でも合憲である。
Ⅲ 設問後段
1.まず被選挙権を35歳以上とさらに制限した点が問題となる。確かにどこで線引きするかは政治的・専門的な問題であり、裁判所の判断能力は乏しいともいえる。
しかし民主政の過程自体を制限するものであり、一旦侵害されると回復することが難しいから、既に定めた被選挙権をさらに制限することは合理性を欠くと考える。
したがって、この点では違憲である。
2.次に衆参で差を設けないことについては、年齢層による民意の反映自体が保障されているわけではなく、これでも多様な民意の反映は実現できるから、必要性・合理性に欠けない。
したがって、この点では合憲である。
以上
1.被選挙権とは、選挙で選定されうる資格である。ここで公務員選定権(15条1項)は憲法上保障されており、選定の相手方を自由に選べなければその保障の意味がないから、被選挙権は公務員選定権と表裏の関係にあるものとして憲法上保障されていると解すべきである。
2.(1)この公務員選定権は、国政の最高決定権たる国民主権(前文1段、1条)の行使という性格を持ち、国家の命運を左右する重要な権利である。そのため、その自由な行使だけでなく適正な行使も要請されていると解される。
(2)また憲法は代表民主制を採用(43条等)して、国政の最高決定権が究極的に国民の権威に基づくという形を原則としており、公務員選定権はその例外的なものである。そして両議院議員の資格は法律で定めるとされている(44条本文)から、15条1項は全ての公務員の選定権を具体的に保障したものではなく、最終的に国民の意思を反映した選定がなされればよいと解される。
(3)さらに、被選挙権を年齢によって制限することは少なくとも明示的には禁止されていない。(44条但書)
3.したがって本問法律の合憲性が推定され、必要性・合理性が欠けない限り合憲となると考える。
Ⅱ 設問前段
1.まず、成年者は選挙権を行使できる(15条3項)にもかかわらず、それから一定の年数を経ないと表裏の関係にある被選挙権がないとされている点が問題となる。
(1)確かに公務員選定権をできるだけ自由に行使できるようにするという観点からは、成年者に被選挙権を認めるという制度の方が合理的かもしれない。
しかし代表民主制が採られ国政の運営に密接に関わる国会議員には、一般よりある程度高度かつ専門的な判断能力が必要とされる。
(2)よって、選挙権を何回か行使して国政に関わる中でかかる能力を養った者にのみ被選挙権を認めるということには、国民主権の適正な行使という観点から一定の必要性・合理性がある。
(3)したがって、この点では合憲である。
2.次に、衆参両議院で被選挙権に差を設けていることが問題となる。
(1)思うにその任期の差(45条、46条)から、衆議院は民意の忠実な反映、参議院は安定的な民意の反映を予定していると解される。これらを互いに抑制均衡関係におく(59条等)ことで、多様な民意を反映した統一的な国家意思を練り上げていくのである。
(2)とすると、年齢層による多様な民意を反映する必要性・合理性は認められる。
(3)したがって、この点でも合憲である。
Ⅲ 設問後段
1.まず被選挙権を35歳以上とさらに制限した点が問題となる。確かにどこで線引きするかは政治的・専門的な問題であり、裁判所の判断能力は乏しいともいえる。
しかし民主政の過程自体を制限するものであり、一旦侵害されると回復することが難しいから、既に定めた被選挙権をさらに制限することは合理性を欠くと考える。
したがって、この点では違憲である。
2.次に衆参で差を設けないことについては、年齢層による民意の反映自体が保障されているわけではなく、これでも多様な民意の反映は実現できるから、必要性・合理性に欠けない。
したがって、この点では合憲である。
以上