第1.Aが甲を通常逮捕(199条)した際、甲が持っていた携帯電話を、そのメモリーを確認することなく差し押さえた行為
(※冒頭3行削除)
1.これは包括的差押として、一般的・探索的差押を禁ずる令状主義(218条・憲法35条等)に反しないか。
2.(1) そもそも令状主義の趣旨は、捜査権限の行使による個人の権利・利益に対する制約を必要最小限にするため、公平中立な第三者的地位にある裁判官による司法的抑制をかけた点にある。
とすると、捜査に必要なものかどうかを確認しない包括的差押は、許されないのが原則である。
(2) もっとも、罪証隠滅などで、捜査の必要性が害される場合もある。
そこで、①隠滅されやすい証拠が、差押物件に含まれている蓋然性が高く、②その証拠の必要性も高く、③他に代替手段のない場合には、包括的差押も例外的に許されると解する。
3.(1) 本問で、①甲は覚せい剤譲渡の被疑者なので、譲渡の相手方との連絡記録がその携帯電話のメモリー内に含まれている蓋然性が高い。
そして、携帯電話のメモリーの容量には限度があるから、その連絡記録は隠滅されやすいといえる。
(2) また、②覚せい剤犯罪は密行性があり、証拠収集が困難な場合も多いから、その証拠としての必要性も高い。
(3) さらに、③あるメモリーだけ分離して差し押さえることは不可能なので、他に代替手段がないといえる。
4.よって、例外的に令状主義に反せず、適法である。
第2.Aが無令状で甲の携帯電話を操作して、そのメモリーの内容を精査した行為
1.これは、甲のプライバシー権(憲法13条)に対し実質的な制約を加える「強制の処分」(197条1項但書)にあたる。
そのうち、五官の作用で物の性状等を感得する「検証」(218条1項)にあたると考える。
とすると、令状が必要なのが原則である。
2.もっとも、逮捕に伴う「検証」(220条1項2号)にあたれば、無令状でも例外的に許される。(220条3項)
(1) では、逮捕に伴う「検証」にあたるか。
(2) そもそも220条が令状主義の例外を認めた趣旨は、厳格に、逮捕の完遂のためだと考える。
とすると、逮捕者の身体の安全、被逮捕者の逃亡・罪証隠滅防止のためであれば、逮捕に伴う「検証」にあたると解すべきである。
(3) 本問では、前述のように携帯電話のメモリー容量には限度があるから、罪証隠滅防止のためといえる。
(4) よって、逮捕に伴う「検証」にあたる。
3.したがって、適法である。
第3.Aが乙に、自分を甲と誤認させて、覚せい剤を差し出させた行為
1.これは、個人の重要な権利・利益に実質的な制約を加える「強制の処分」にはあたらない。
2.とはいえ任意捜査も、多かれ少なかれ相手方に影響を及ぼすから、適正手続の観点(1条・憲法31条)から、「目的を達するため必要」なだけでなく、相当なものでなければならない。(197条1項本文:捜査比例の原則)
3.(1) 本問では、覚せい剤犯罪の捜査という「目的を達するため」には、Aが甲と名のって乙に誤認させ、覚せい剤を差し出させることも「必要」である。
(2) また、覚せい剤犯罪は密行性の高い重大犯罪なので、この程度の欺罔的手段ならば相当といえる。
4.よって、適法である。
第4.Aが乙を現行犯逮捕した行為
乙は「現に」覚せい剤所持罪を行い、その逮捕の必要性もあるので、適法である。(212条・213条)
以上
(※冒頭3行削除)
1.これは包括的差押として、一般的・探索的差押を禁ずる令状主義(218条・憲法35条等)に反しないか。
2.(1) そもそも令状主義の趣旨は、捜査権限の行使による個人の権利・利益に対する制約を必要最小限にするため、公平中立な第三者的地位にある裁判官による司法的抑制をかけた点にある。
とすると、捜査に必要なものかどうかを確認しない包括的差押は、許されないのが原則である。
(2) もっとも、罪証隠滅などで、捜査の必要性が害される場合もある。
そこで、①隠滅されやすい証拠が、差押物件に含まれている蓋然性が高く、②その証拠の必要性も高く、③他に代替手段のない場合には、包括的差押も例外的に許されると解する。
3.(1) 本問で、①甲は覚せい剤譲渡の被疑者なので、譲渡の相手方との連絡記録がその携帯電話のメモリー内に含まれている蓋然性が高い。
そして、携帯電話のメモリーの容量には限度があるから、その連絡記録は隠滅されやすいといえる。
(2) また、②覚せい剤犯罪は密行性があり、証拠収集が困難な場合も多いから、その証拠としての必要性も高い。
(3) さらに、③あるメモリーだけ分離して差し押さえることは不可能なので、他に代替手段がないといえる。
4.よって、例外的に令状主義に反せず、適法である。
第2.Aが無令状で甲の携帯電話を操作して、そのメモリーの内容を精査した行為
1.これは、甲のプライバシー権(憲法13条)に対し実質的な制約を加える「強制の処分」(197条1項但書)にあたる。
そのうち、五官の作用で物の性状等を感得する「検証」(218条1項)にあたると考える。
とすると、令状が必要なのが原則である。
2.もっとも、逮捕に伴う「検証」(220条1項2号)にあたれば、無令状でも例外的に許される。(220条3項)
(1) では、逮捕に伴う「検証」にあたるか。
(2) そもそも220条が令状主義の例外を認めた趣旨は、厳格に、逮捕の完遂のためだと考える。
とすると、逮捕者の身体の安全、被逮捕者の逃亡・罪証隠滅防止のためであれば、逮捕に伴う「検証」にあたると解すべきである。
(3) 本問では、前述のように携帯電話のメモリー容量には限度があるから、罪証隠滅防止のためといえる。
(4) よって、逮捕に伴う「検証」にあたる。
3.したがって、適法である。
第3.Aが乙に、自分を甲と誤認させて、覚せい剤を差し出させた行為
1.これは、個人の重要な権利・利益に実質的な制約を加える「強制の処分」にはあたらない。
2.とはいえ任意捜査も、多かれ少なかれ相手方に影響を及ぼすから、適正手続の観点(1条・憲法31条)から、「目的を達するため必要」なだけでなく、相当なものでなければならない。(197条1項本文:捜査比例の原則)
3.(1) 本問では、覚せい剤犯罪の捜査という「目的を達するため」には、Aが甲と名のって乙に誤認させ、覚せい剤を差し出させることも「必要」である。
(2) また、覚せい剤犯罪は密行性の高い重大犯罪なので、この程度の欺罔的手段ならば相当といえる。
4.よって、適法である。
第4.Aが乙を現行犯逮捕した行為
乙は「現に」覚せい剤所持罪を行い、その逮捕の必要性もあるので、適法である。(212条・213条)
以上