1.X銀行のY社に対する手形金支払請求が認められるためには、Y社が裏書人としての担保責任(手形法77条1項1号・15条1項)を負担し、かつX銀行がY社から抗弁を対抗されないことが必要である。
2.(1) まず、Y社が裏書人としての担保責任を負担するのは、①裏書が成立し(77条1項1号・13条)、②X銀行が遡求条件を具備した場合である。
ア.ここで、振出人Z社は、破産手続開始の決定を受けている(77条1項4号・43条2号前段)ので、その他の要件(44条)を満たせば②をみたす。
イ.(ア) しかし、Y社甲支店長Aの裏書は、実際には保証の趣旨でなされている。
そしてAは、Y社の内規で手形保証をすることを禁じられている。
そこで、無権代理として①をみたさないのではないか。
(イ) この点、手形行為の内容は、手形上の記載通りに決まる。(文言性)
そして、手形上の記載が裏書となっている以上、Aの手形行為は手形保証ではなく、裏書である。
また、裏書人の担保責任は、手形流通促進のため法が特に認めたものである。
(ウ) よって、①をみたす。
(2) では、X銀行はY社から、何らかの抗弁を対抗されないか。
  ア.この点、Aの裏書は実際には保証の趣旨であり、AはY社の内規で手形保証をすることを禁じられているとの抗弁は、手形外の事情に基づく原因関係上の人的抗弁である。
    よってY社は、この抗弁が成立するなら、手形面上直接の相手方たるX銀行に対し、同抗弁を対抗できる。
  イ.(ア) では、上記抗弁が成立するか。
     (イ) まず、Y社甲支店長Aは、社会通念上形式的に「支配人」(商法38条1項)にあたる、と解する。
なぜなら、取引安全のため、社会通念に基づき形式的に判断すべきだからである。
(ウ) とすると、X銀行に、AがY社の内規で手形保証を禁じられていることにつき、悪意又はこれと同視しうる重過失ない限り、上記抗弁は成立しない。(38条3項)
(エ) ただ、Xは銀行だから、Z社への融資条件に見合った信用のある第三者かどうか、Y社の内規まで調査しえたとも思われ、重過失を認めうる。
3.よって、この場合、X銀行はY社に対し、手形金支払請求できない。
                               以上