Ⅰ 問1
AがBとの請負契約関係(632条)を終了させるには、この契約を解除する必要がある。
1.そのためAは、土地上に2階建住宅を新築する仕事が未だ「完成」していないので「何時ニテモ解除」できる(641条)と主張することが考えられる。この主張は正当か。
2.確かにBはコンクリートの基礎工事は一応終わらせているが、あくまで契約目的は2階建住宅の新築であり、仕事が「完成」したとはいえない。
そして同条が「何時ニテモ解除」できるとした趣旨は、注文者にとって不要になった仕事を完成させても、当事者にとっても社会経済上も無駄である点にある。
とすれば、「解除」するにあたり債務不履行解除のような相手方の帰責性(541条、543条)は不要であり、その代わり請負人の被る損害を賠償させて当事者間の公平を図ったのである。
3.よってAは基礎工事の不完全性などを立証することなく、Bが解除によって被る損害を賠償すれば、前記解除権行使の主張ができる。
Ⅱ 問2
1.まずAは、屋根の防水工事の手抜きのため未だ仕事は「完成」していないと主張して、これと対価関係(同時履行関係と書いちゃったかも)にある報酬としての請負残代金1000万円(632条)の支払を拒むことが考えられる。(533条)この主張は認められるか。
(1)確かに厳密には、「完」成していないとは言いうる。
しかし本当に完全な完成を求めると、瑕疵担保責任規定(634条等)の意味がなくなる。完全に完成するまで請負人の仕事完成義務の履行を求めることができ、瑕疵修補請求等をする必要がなくなるからである。
(2)そこで、外観上一応仕事が完成したと見られるときは「完成」したものと扱い、瑕疵担保責任による処理に移行すべきである。637条が瑕疵担保責任の追及期間をある程度置いており、瑕疵を発見しづらい状況を予定していると考えられることからも、かかる解釈が妥当である。
(3)本問では、Bは一応建物を完成させたとされており、屋根の防水工事の手抜きは外観上分からず1週間後雨漏りがあって初めて気づいたものである。
よって仕事は「完成」しており、建物も引渡されているので、Aの前記主張は認められない。
2.こうなると、AとしてはBの瑕疵担保責任を追及したいところである。雨漏りによるパソコン等の損害50万円の賠償請求と、屋根の補修工事費用100万円の損害賠償請求か瑕疵修補請求をすることが考えられる。(634条)
(1)まずこれらは「損害」(634条2項)に含まれ、賠償請求が認められると解する。同条は、仕事完成義務が完全には履行されていないにもかかわらず完成したものと扱って利害調整をする債務不履行責任の特則であり、「損害」には履行利益まで広く含むと解されるからである。
(2)よって、Aはこの合計150万円の損害賠償請求権と、1000万円の残代金支払債務とを相殺(505条1項)し、850万円しかBに支払う必要がないと主張できる。
(3)また、屋根の防水工事の手抜きという瑕疵がたとえ重要ではないとしても、100万円という修補費用は建物2000万円に比し「過分」(634条1項但書)ではないと考えられるから、瑕疵修補請求も認められる。
よって屋根の瑕疵について修補請求を選択した場合、まずAは50万円の損害賠償請求権と1000万円の残代金支払債務とを相殺し、Bに対し950万円しか債務を負わないと主張できる。
そして、瑕疵の修補と実質的に対価関係のある100万円について、公平の観点から瑕疵修補が完了するまで支払を拒めると解する。(1条2項)
以上
AがBとの請負契約関係(632条)を終了させるには、この契約を解除する必要がある。
1.そのためAは、土地上に2階建住宅を新築する仕事が未だ「完成」していないので「何時ニテモ解除」できる(641条)と主張することが考えられる。この主張は正当か。
2.確かにBはコンクリートの基礎工事は一応終わらせているが、あくまで契約目的は2階建住宅の新築であり、仕事が「完成」したとはいえない。
そして同条が「何時ニテモ解除」できるとした趣旨は、注文者にとって不要になった仕事を完成させても、当事者にとっても社会経済上も無駄である点にある。
とすれば、「解除」するにあたり債務不履行解除のような相手方の帰責性(541条、543条)は不要であり、その代わり請負人の被る損害を賠償させて当事者間の公平を図ったのである。
3.よってAは基礎工事の不完全性などを立証することなく、Bが解除によって被る損害を賠償すれば、前記解除権行使の主張ができる。
Ⅱ 問2
1.まずAは、屋根の防水工事の手抜きのため未だ仕事は「完成」していないと主張して、これと対価関係(同時履行関係と書いちゃったかも)にある報酬としての請負残代金1000万円(632条)の支払を拒むことが考えられる。(533条)この主張は認められるか。
(1)確かに厳密には、「完」成していないとは言いうる。
しかし本当に完全な完成を求めると、瑕疵担保責任規定(634条等)の意味がなくなる。完全に完成するまで請負人の仕事完成義務の履行を求めることができ、瑕疵修補請求等をする必要がなくなるからである。
(2)そこで、外観上一応仕事が完成したと見られるときは「完成」したものと扱い、瑕疵担保責任による処理に移行すべきである。637条が瑕疵担保責任の追及期間をある程度置いており、瑕疵を発見しづらい状況を予定していると考えられることからも、かかる解釈が妥当である。
(3)本問では、Bは一応建物を完成させたとされており、屋根の防水工事の手抜きは外観上分からず1週間後雨漏りがあって初めて気づいたものである。
よって仕事は「完成」しており、建物も引渡されているので、Aの前記主張は認められない。
2.こうなると、AとしてはBの瑕疵担保責任を追及したいところである。雨漏りによるパソコン等の損害50万円の賠償請求と、屋根の補修工事費用100万円の損害賠償請求か瑕疵修補請求をすることが考えられる。(634条)
(1)まずこれらは「損害」(634条2項)に含まれ、賠償請求が認められると解する。同条は、仕事完成義務が完全には履行されていないにもかかわらず完成したものと扱って利害調整をする債務不履行責任の特則であり、「損害」には履行利益まで広く含むと解されるからである。
(2)よって、Aはこの合計150万円の損害賠償請求権と、1000万円の残代金支払債務とを相殺(505条1項)し、850万円しかBに支払う必要がないと主張できる。
(3)また、屋根の防水工事の手抜きという瑕疵がたとえ重要ではないとしても、100万円という修補費用は建物2000万円に比し「過分」(634条1項但書)ではないと考えられるから、瑕疵修補請求も認められる。
よって屋根の瑕疵について修補請求を選択した場合、まずAは50万円の損害賠償請求権と1000万円の残代金支払債務とを相殺し、Bに対し950万円しか債務を負わないと主張できる。
そして、瑕疵の修補と実質的に対価関係のある100万円について、公平の観点から瑕疵修補が完了するまで支払を拒めると解する。(1条2項)
以上