○刑法H17-48解答過程
やはりとりあえず、「甲に成立する殺人教唆罪の罪数」というテーマ・「正」を選べという指定に印をつけ、選択肢群のすぐ左上に「○」と明示したら、いきなり選択肢を見る。

1.①b②a④a  2.②b③a⑦a  3.②b④b⑥b
4.②b⑤b⑦b  5.③b⑤b⑦a

で、「争点整理」。
①b→不明
②a1つ対b3つ→「多数決」でbと推定
⇒選択肢2と3と4の「②b」を△で囲み、問題文の「②()」内の「b」も△で囲む。
③a1つ対b1つ→争点
④a1つ対b1つ→争点
⑤b2つ→「自白」成立でbと推定
⇒選択肢4と5の「⑤b」を△で囲み、問題文の「⑤()」内の「b」も△で囲む。
⑥b→不明
⑦a2つ対b1つ→「多数決」でaと推定
⇒選択肢2と5の「⑦a」を△で囲み、問題文の「⑦()」内の「a」も△で囲む。

すると、選択肢2と4と5が△2つ、選択肢3が△1つになってる。
そこで、選択肢2と4と5のどれかから検討するのが、正答可能性の最も高い最短ルート。
そのうち2と5が、△のついていない③で、aかbか争っている。
ならば、③が確定できれば有力候補を2つに絞れて効率がいいので、③から検討する。
でも、③はすぐには確定できない。

そこで、問題文から突破口・ヒントを探す。()が混ざってなくて、ちゃんとした文章になってるところを探す。
見ていくと、学生B発言1~2行目がまず目に付くが、「処断刑」という語が目に入ったところで、「メンドいから後回し」と判断する。
僕が目を付けたのはその次、学生C発言1行目「教唆する行為こそ~重視」というところ。
①と③の()内の記述がチラリと目に入っていたので、正犯行為基準説と教唆者行為基準説という対立があることが分かっていた。(これは過去問をちゃんとやってれば、知識としても入ってるはず。)
よって、学生Cは正犯行為基準説というより教唆者行為基準説なんだろう、と確定してしまう。(こういった、比較による相対的確定テクは、あらゆる問題形式で重要!)
そして、学生C発言3行目「B君が指摘する~問題について、僕は~」とあるので、学生Cの教唆者行為基準説にも、「B君が指摘する~問題」があることが分かる。
とすると、学生Bは学生Cと対立する(⇒⑥a)正犯行為基準説であり(⇒③a)、学生Aは学生Cと同じく教唆者行為基準説だ(⇒①b)と確定できる。
この思考と同時並行して、問題文の⑥()内のa・③()内のa・①()内のbに○をつける。
その上で、
選択肢3の「⑥b」に×を付けて「3.」を斜線で消す。
選択肢2の「③a」を○で囲み、この時点で選択肢2が「△○△」になってて正答可能性が最も高いので、「2.」を○で囲む。
一応、選択肢5の「③b」に×を付けて「5.」を斜線で消す。
一応、選択肢1の「①b」を○で囲む。

で、正答可能性の最も高い答え「2.」が出たので、別紙の解答表に「2」と書き込み、見直しランクBをつけて、次に進む。

…しかし、このままにしておくと、誤答になってしまう。(正答は4)
つまり、この問題に戻ってきて確認作業をする時間がなければ、誤答になってしまうのだ。
また、そういう不安を抱えながら解き進めるのは、メンタル面にマイナスになるという人もいるだろう。
これが、「争点整理」のリスク。

ただ、H17の穴並系問題でこういう事態に陥るのは、これ1問だけ。他の年でも、ほとんどない。
なので、「争点整理」によるリスクはかなり小さい。
むしろ、これによる時間短縮というリターンがある。
これまで、問題文をほとんど読んでいないし、頭も大して使っていないからだ。
また、無駄に頭を使わないことで、スタミナ切れが遅くなるというリターンもある。
とすれば、たとえこのような問題を落としたとしても総合点は高くなるだろう、と僕は計算していた。
さらに、上記リターンのおかげか、僕はH17本試験でこの問題に戻ってくることができ、正答できた。具体的にどうやったか?

○で囲んで正答としていた選択肢2を見る。
まず、②bが△なので、これが○になるか考え…たいところだが、「処断刑」というメンドいものについて考えなきゃいかんので、後回し。
次に、⑦aも△なので、これが○になるか考える。
学生C発言3~6行目を、「処断刑」というメンドいものを読み飛ばして見ていくと、「(②)に関して~僕は、⑦(a 教唆者の行為を法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で社会的見解上1個のものと評価できるので観念的競合・b 2個の教唆者の行為によって1個の正犯行為を惹起したと評価できるので包括一罪)」となる。
ここで、②bとの推定は残っているので、(②)には「b 事例Ⅱ」が埋まるという前提で考えていく。
ここで初めて事例Ⅱの図を描いてみたら、「a 教唆者の行為を法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で社会的見解上1個のものと評価できる」とは言えないことに気づいた。「自然的観察の下で社会的見解上」は2個と評価すべきだからだ。(ここは、過去問の類似分野をやっていたおかげで判断できたのかも。)
とすると、②bならば⑦aにはならない。
よって、選択肢2はその内部で矛盾しており、正答にはなりえない。
⇒「2.」を斜線で消す
で、ここまでで選択肢2と3と5が斜線で消されているので、正答は1か4のどちらか。
とりあえず、△2つの4より○1つの1の方が正答可能性がわずかに高いと見て、「1.」を○で囲み、別紙の解答表の「2」を消して「1」と書き込み、見直しランクCをつけて、次に進む。

さらに時間が余ったので戻ってくることができた。
正答は選択肢1か4ということで、選択肢1と4で争点になっている②を見る。
やっぱ「処断刑」は考えなくちゃいかんのか…と諦めて、ここで初めてこれについて考え始める。
で、事例Ⅰの図も描いて、「A君の考え方」つまり教唆者行為基準説からは、事例ⅠとⅡどちらが「甲の処断刑のほうが乙の処断刑よりも重くなり」と言いやすいか、図を見て考える。
すると、甲が1つの行為・乙が2つの行為をしている事例Ⅰよりは、甲が2つの行為・乙が1つの行為をしている事例Ⅱの方だろう、と考えられる。
よって、②bと確定できる。
そこで、選択肢1の「②a」に×をつけ、「1.」を斜線で消す。
そして、選択肢4の「②b」を○で囲み、「4.」も○で囲み、別紙の解答表の「1」を消して「4」と書き込む。
⇒正答!


…という感じです。
以上は、択一における「ミルフィーユ方式」の説明にもなってます。
結局この問題は3回まわってきて、徐々に思考を重ねていったという点で。
H17で「争点整理」などを使った結果、最も手間がかかった穴並系がこの問題です。
でも僕は、少なくとも全体的には、こういう風にやった方が結局は時間短縮になりました。
分からないところやメンドいところに引っかかっている時間の方が長かったからでしょう。悩んですぐ飛ばした問題にもう一度戻ってきたら、悩みがすぐ解消できたという経験もしばしばありましたし。
ただ、これを実際やってみてまわりくどいと感じた人は、採り入れない方がいいかもしれません。

なお、以上の解き方は、択一穴並系問題解法テクのほぼ極限まで達していると自負しております。
なので、ここまでやらないと受からないなんてことは全くありません。
むしろやりすぎです。H16に、択一本試験で要求される「基本」事項をほぼ確定し終わって、知識面での進歩はもうあまりないなと思ったので、テクを追究してみただけです。
択一も論文も、知識と戦略・戦術の総合力で決まるというコンセプト(by豊島先生)で、自分にとって優先順位の高いところから伸ばしていってください。