昨年末、たまたまSNSを開いたら、「飼い主さん募集します」の文字がとびこんできた。この犬を見て一昨年末のことを思い出した。

犬種は我が家と同じ。一昨年同じように飼い主さんを募集していたが、この犬だけ縁がなかったようだった。3度お見合いして残念な結果となっていた。この時も私はとても飼い主さんの気持ちを気にした。この犬種はそう簡単に「はい!」と手を挙げないことも、自分が繁殖した経験、日本での飼育頭数が少ない訳などから容易にわかっている。だからこそ、どんな思いでいるのだろうと、とてもその時に私も切なくなり、飼い主さんを心配した。この時ミントがいなければ、手を挙げていただろう。しかし、この犬種のオス同士、特に実猟タイプの犬の場合、色々あることを考慮し、この時は断念したのだ。そしてミントの死。それから5か月後。私の目の前に1年経過したその犬の画像が飛び込んできたのだ。

「諦めて自分の家の子にしてもいいと思っています」の飼い主さんの言葉があった。しかし1年経過して何故また飼い主募集なんだろうか?と私の中では消化できないものがあった。1年経過して、犬同士うまくいかなくなったのかな?など勝手な想像をしながら心配した。飼い主さんに今回出す理由を尋ねた。

詳細は個人情報なので言えないが、私としては心配するものであった。そのメッセのやり取りで、飼い主さんから「もらってください。ただでいいですからお願いです。すぐにでも乗せて送ります」と。私はそのメッセを受け取ったとき「何とかしなくては」と自分の中で色々な方向から考えた。無料でももらってほしいと言っている飼い主さんの声を聞いてよほど困っているんだなあ?と感じた。もちろんこの時点で私は無料で受け取ろうなんて思っていなかった、送料+気持ち。これは最後まで頭の中にあった。

実猟犬。1歳雄。私は60歳、主人は68歳。

心の声:「15歳足してごらん?」私は75歳だよ。もし何かあったらどうする?

誰が面倒見るの?今の仕事との両立はどうやってやるつもり?実猟タイプから家庭犬にトレーニングしていく体力あるかい?

・・・・・・・・・・相談があったのは12月22日。年も終わるころだった。

私は急いですべてを整えた。私たちに何かあったときの引き取り先も決め、契約書を取り交わすまでとなっていた。すべてを整えてから飼い主さんへお伝えした。その後その方のSNSには「同じ犬種を飼育の方に決まりました。安心して出発させられます」との投稿があった。短期間の間に仕事を行いながら、すべてを整えることに非常な精神力を要した。私が仕事納めをしてからとも考えたが、気象的に非常に厳しい予報であった為、24日に決定した。部屋もすべてその犬のために模様替えもした。エサも名前も決めその日を待った。仕事のスケジュールもすべて変えた。

飛行機の到着時間、そこまでの準備、方法を主人とシュミレーションを考えながら、ワクワクして待った。新しい犬を迎える前日の23日の昼過ぎ。1通のメッセが飼い主さんから入った。「自分の近くに住んでいる方が、どうしても引き取りたいと言ってきているんです。同じ兄弟犬を飼育している方で、すぐにでも車で迎えに来たいと言っているんです。一応お伝えしておきます。そちらに負担をかけるよりはいいかなと思って」と。

私は困惑した。どう返したらいいのだろう?確かに犬のことを考えれば、こちらの環境より、家にドッグランがあり兄弟犬がいれば犬にとっては良いだろう。

そんなことわかっているよ。ただ私の今までの気持ちはどうなってしまうのか?どうしたらよいのか・・・「お任せします」とだけ答えた。

心に大きな穴が開いた。主人も同じだったと思う。犬が来るはずだったその日は全く予定がなかった。あやめを連れて山へ行った。自分たちの心とは全く反して澄み渡る快晴の日だった。気持ちを何とか上に持っていきたかったけれど無理だったね。そして翌日その方のSNSの投稿を見ると、その犬に関することが投稿されていた。そしてそこには「この方でよかったと思います」と。

思わず笑ってしまった。「そうだよね、そうこの犬には私なんかではなく、我が家ではなく、この家がこの犬にとって良かったんだよ!」と必死に言い聞かせている自分がいた。そこから私はあまりにも残念だったので、やり取りがあった。

でもね、これも飼い主さんにしては余計なことだったんだよなあと。

わたしが真剣に考えてしまった。一人でどうにかしようとしてしまった。

あまりにも深刻な内容だったから、私はまじめに考えたのだ。

そしてその犬の今後のことも考えた。それだけ命を預かることが重いことだから・・・でもね、これも余計なことなのだ。すべては私のお節介。自分で一生懸命何とかしなくてはって思ってしまったんだよね。

全ては私が勝手に頑張っただけ。相手の言葉を信じた私が余計だったってこと。

そしてもし私だったら・・・先に決めてくださった方を優先に考えます。そしてもしその方にならなくても決して優劣をつけることはしません。引き受けた方の気持ちを大切にします。今置かれている自分の状況が少しでも楽になれるのだから、感謝します。そして安易に決められる犬種でないことがわかっているからです。そしてその犬種に対して環境を整えます。

ミントからの贈り物かな?なんて勝手に思っていたけれど、きっとミントは「お母さん、もういいよ」って言っていたのかな?

そうだよねミントが旅立ってまだ5カ月しかたっていなかったんだもの。

ミントが旅立って、三太がきて・・・・

ごめんね、ミント。

今度は三太の話ね。  続く