憂き事多かりし時、渡れる浜千鳥を見て詠める
526.浜千鳥吐きたる息を身に纏ひ寒きを知らで渡りをやせむ 冬
憂き事続きし時に詠める
527.永らへばかく憂きことやまたあらむ生まれてこなた心憂かるなり 雑
さ夜衣を詠める
528.さ夜衣かへす日続き涙川流れし跡を苦しとぞ思ふ 恋
返歌
529.さ夜衣かへす辛さを知る前に人の思ひをしかとぞ聞くべき 恋
冬の揺れる水面を詠める
530.山おろしの池の水面を吹く度に凍え震ひて波ぞ立ちける 冬
星空と雪を詠める
531.星の夜の空より降れる白雪の寒きはよそに胸ぞ焦がるる 冬
恋歌として詠める
532.手をまじへともに消えなば後の世も深き契りの仲とやならむ 恋
返歌
533.人の手をまじへず死すとも後の世も深き契りの仲を望まむ 恋
老いを詠める
534.永らへば鏡の影ぞ変るべき盛りの内の限りともがな 雑
また、老いを詠める
535.永らへばあたはぬことぞ増しぬべき盛りの内の限りともがな 雑
世を詠める
536.憂き世にて逃るる術ぞすでになき身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ 雑
手枕を詠める
537.手枕の名残りばかりの痺るるも君を思へば苦しさぞなき 恋
返歌
538.手枕の頭に残る温さもぞ人の思ひの名残りに見ゆる 恋
独り身を詠める
539.独り身の何をや悔いむなべて世の死出の旅路は連れのなければ 雑
また、独り身を詠める
540.残すよりまた残るより始めより独り身ならば憂きことぞなき 雑
己を詠める
541.底知れぬ人を頼るぞ恐ろしき己の中も知らぬと思へば 雑
また、己を詠める
542.底知れぬ人をぞ頼ることよりも己の殻にいるぞ楽なる 雑
歴史の魅力を詠める
543.歴史とは万の人の分かれ枝で今も昔も暗闇の中 雑
人の一生を詠める
544.木々よりも命短き人故に悔ゆることなく生きてゆくべし 雑
人の一生を恋歌として詠める
545.木々よりも命短き人故に熱き思ひをぞぶつけ合ふべき 恋
返歌
546.木々よりも命短き人故に熱き火傷は水の泡かな 恋
自分の歌について詠める
547.人なれば曲がらぬ道も曲がり道も歩みて先へ進むなりけり 雑
建礼門院徳子様の御心を慮って詠める
548.波に果てし子等をば見つつ独りのみ生くる心ぞいとど悲しき 雑
世界情勢を詠める
549.世の中の全てを成すは青柳の糸かぞ思ふ乱れ続けば 雑
犬の足音を詠める
550.歩みては後ろより来る我が犬の足音するぞ愛しかりける 雑