○『ボッチ』
クラスでいつも一人で過ごしている男子生徒。本人は特に気にしていないが、周囲からは「ボッチ君」と呼ばれている。
ある日の放課後、それを心配した担任教師は生徒を呼び出した。そして、
「お前がいつも一人ボッチなのが心配だ。悩みがあるなら話しなさい」
と優しく声を掛ける。しかし生徒は、自分が一人ボッチだとは認めようとしない。それに対して、呆れた教師が、
「じゃあ何ボッチなんだ」
と尋ねると、生徒はニヤけて、
「ダイダラボッチです」
と言い出す。その理由を聞かれた生徒は、自分が発言すると教室が静まり返り、クラスの景色が一変することを挙げ、「景色を変える」という一点から、山や湖沼を作って、日本の景色を一変させた伝説の巨人・ダイダラボッチと自分は同じ存在だと主張する。それに対して、教師が否定しても、生徒はさらに、
- ダイダラボッチは一人で山を作った
- 自分も一人で行動している
- ダイダラボッチは巨大な存在だった
- 自分もクラスでの空気を一変させるぐらい存在感は巨大である
- ダイダラボッチは人々に強い印象を残した
- 自分も発言すると、クラスでの空気を一変させるぐらい全員に強い印象を与える
と続けて、以下のような言い合いをした。
生徒「ダイダラボッチは足跡が湖になりました」
先生「お前の足跡は何になる」
生徒「穏やかな湖みたいな静かな空気になります」
や、
生徒「ダイダラボッチは山を作りました」
先生「お前が山に関するものなんか作ってないだろ」
生徒「山頂のような寒い空気を作りました」
先生「どっちも空気じゃないか」
このように、次々に無理な共通点を見つけては、「やはり自分はダイダラボッチだ」と珍説を展開していく。教師はそのたびに、
「それは友達がいないだけだ」
「誰もそんな意味で驚いていない」
「空気を変える話ばかりじゃないか」
「全部こじつけだ」
と反論するが、生徒は聞く耳を持たない。やがて教師が、
「お前はダイダラボッチなんかじゃない。ただの一人ぼっちだ!」
と一喝すると、生徒は急にうつむき、カバンから被り物を取り出して、それを被ると、肩を震わせ始める。教師は言い過ぎたと反省し、
「すまん、先生が悪かった」
と謝る。すると生徒は顔を上げ、被り物を外して、
「安心してください。泣いてませんよ」
と答える。生徒が嘘泣きしていたと知った教師は、軽く舌打ちをした。更に生徒は、
「ちなみにこれの名前を存知ですか?」
と言うと、教師はため息をついて、
「知らん」
と疲れ気味に答えると、生徒は得意げに
「フロシキボッチ(風呂敷帽子)です」
と言い放つ。