夏の雲を詠める
76.夏の日の昼間の空は青ければ僅かの雲も旅をしにけり 夏
冬の到来を詠める
77.夕月夜野辺に吹きたる風寒み冬の来たるを知りにけるかな 冬
老化を詠める
78.年老ひて体は軽くなりぬれど足取りは重くなりにけるかな 雑
秋の夕暮れ時、鹿の鳴きけるを詠める
79.悲しびぞ今ひとしほのまさりける鹿鳴く山の秋の夕暮 秋
嵐で荒れる海を詠める
80.おもしろや波浪のあらしと言ひながらそれを起こすもあらしなりけり 雑
夕暮れの影を見て詠める
81.西日差し伸びたる影は我が思ひの漏れ出づるものと君知り給へ 恋
返歌
82.日沈みて光も影も見え失せぬ君が心もかくやあるらむ 恋
夏詣の帰りの街並みを見て詠める
83.詣でして山にて見ゆる景色こそ神のしるしと思ひけるかな 神祇
物名「鎹」を入れて詠める
84.たましひかすがひし明かりの輝けばおぼろに見ゆる盆の夜の街 物名
夏の季節に男の訪れが途絶えし時に詠める
85.うらみてもかひのなしとは知りながら夏のうみとは人なみのよる 恋
返歌
86.白波は寄せては返すものなれば待てばかひもぞ来たるべからむ 恋
夏の逢瀬を詠める
87.夏の夜はやがて明けぬるものなれば逢ふも短き季故にぞ憂き 恋
返歌
88.夏の夜は蝉の命と似たれども思ひ絶えねば声ぞ残れる 恋
長月の逢瀬を詠める
89.長月の夜は長しと言ひながら逢へば恨めしき曙の空 恋
返歌
90.別れにし名残の惜しきに降る雨の霞みて晴れぬ曙の闇 恋
蛍火を詠める
91.夜もすがらものを思へば蛍火の飛び交ひにける夏の里川 夏
曙の空を詠める
92.曙の空となりぬと信じけり東の方に赤きを見れば 雑
明け方を詠める
93.明け方の光を見れば思ひ出でぬ昔にぞ見し阿弥陀の御光 釈教
暁の月を詠める
94.暁の月をぞ見れば悲しびのいと深かりける独り過ぐす夜 雑
有明の月を詠める
95.有明の月をぞ見れば憂かりつるいと古くさき吾に見えつれば 雑
旅の途中、湖のほとりにて朝日の光を見しことを詠める
96.朝ぼらけ出づる明かりぞ湖の波を渡りて道となりける 羇旅
つとめての雪を詠める
97.つとめての雪降る道ぞ美しき踏む人見えぬみ白景色に 冬
東雲の沢を詠める
98.東雲の沢ぞあはれはまさりける空にむらだつ鴫の姿に 雑
夕霞を詠める
99.黄昏の光を弱みおぼろなる夕霞立つ春の山の端 春
くまなき月を眺めて亡き友を思ひ出でて詠める
100.久方のくまなき月を眺むれば昔の人を思ひ出でけり 哀傷