大野には勝てない...と
最初から分かっていた
簡単に首を取られ
肋骨をやられた
しかも...内臓を傷つけない絶妙な力の入れ具合で
こんな奴...初めてだった
俺は...子供の頃から翔ちゃんを守る為に鍛えてきた。勉強は出来なかったけど。
勉強ばかりしていた翔ちゃんの横でマンガを読みながら過ごすのが常で。
だから当然、翔ちゃんの学力には程遠く勉強で入れなかったけどスポーツ推薦で同じ学校に通う事が出来て相変わらずそばで見守ってきた
立場を公にしていなかったから
ここまで、その意味で危険な目にあった事はない。だいたいがしつこく言い寄ってくる女性を早目に蹴散らすのが主な仕事。
まさか...翔ちゃんが同性でも受け入れるタイプだとは知らなかったから...大野の登場に面食らった...
一番、近くで...一番...そばで見て来たのは俺なのに...あっという間に大野にひかれていく翔ちゃんを、どうやって理解してやれるというのか...
翔ちゃんは知らない
色々と姑息な手を使って
大野を遠ざけた
俺は彼の事を調べていたからわかる
同じ立場の二人が結ばれるはずはないだろうし
何より...彼は理事長の甥のような立場
身内として迎え入れる事を通達した今、彼が翔ちゃんのパートナーにはなれない
それなのに...
お互いに惹かれあった二人が
同じ屋根の下でプラトニックなままだなんて
あり得ない...
万が一...そんな事になれば...俺は...耐えられない
だから...
...翔ちゃんの記憶に
強烈に残してもらえるのは...
大野が俺をヤれば間違いなく捕まる
翔ちゃんから大野を引き離す事も
命懸けで自分を守った俺を翔ちゃんに永遠に刻む事も...
出来る...
一石二鳥じゃん...
目の前で
惚れた男に幼馴染をヤられるなんて
そうそうある事じゃない
翔ちゃんの記憶の中でいつまでも生き続ける事が出来るなら
今世で叶わぬ想いが報われて良いじゃないか...