翔「...どうですか...」
松「心配ない。夏バテだな。軽く熱中症もあって食欲もないみたいだから栄養満点の点滴、一時間ほどかかるが...海斗、大丈夫か?」
翔「はい...お義母さんに来てもらって下で見守りカメラで見てもらってます」
松「本人は一人で留守番出来てるつもりだな(笑)大きくなったもんだ...また、今日で逞しくなる(笑)」
翔「はい(笑)こうやって少しずつ親の手から離れて行くんでしょうね...」
松「嬉しい事だよ...無事にここまでこれた...海斗においては全く健康に問題ないんだから」
翔「...智君は...」
松「...先の事は誰にも分からんよ。一つだけ確かな事は...智の主治医が俺で、その俺が神だって事だ」
冗談でもなんでもなくて松岡先生の言う通りだ...先生が居てくれるから俺達は安心していられる。
松「あ、そうだ...これ、海斗も行って来たら?夜でもまだ暑いから油断はするなよ。夜でも熱中症も怖いから気を抜かない事。
あと...人混みは熱がこもるからな、少し離れた所で楽しむんだぞ」
そう言って渡してくれたのは...
花火大会の案内
若い頃...毎年、花火大会に二人で出掛けた
暗いから顔を差される事がなかったしコッソリ手を繋いでもみんな上ばかり見てるから見つかる事はなかった
一緒に暮らしていた部屋から智君が出て行った年の花火大会...
あの年...俺は仕事で知り合ったスタッフと花火会場にいた...何万人もいる人混みで、明らかに周りの視線を集めていた智君を見つけた時...胸が締め付けられた...遠目にも頬を涙がつたうのが見えたから...
その横顔が花火よりも綺麗で...
智君を見慣れている俺でさえ...
目が離せずにいた...
それなのに...智君を一人にして、自分はいっときの快楽に溺れて...
俺は...なんて酷い事をしたんだろう...
...あの時の罪悪感で、ずっと花火を遠避けていた
去年、海斗にねだられてした小さな手持ち花火でさえ…後ろめたさが胸を刺す
明日...この花火大会に誘ったら
智君はどんな顔をするんだろう...
