智「‼︎翔くん!、どうしたの?どこか、痛い?」


翔「...違う...どこも痛くない...分かんないけど...止まんない...っ...グスッ...」



・・・・・



開店前の店先の掃除。

僕の日課。


掃除くらいしか僕は役にたってないから一生懸命やる。


今日も箒と塵取りを持って店から外に出ると

外階段の上、インターホンを押そうか押そうまいかと人差し指を出したり引っ込めたりの可愛い翔君がいて...いつものカッコつけてる翔君じゃなくて素の様子に見入ってたら...


諦めたみたいに階段を降りて来た


手には僕が好きなケーキ屋さんの紙袋

多分...松兄に会いにきたんだよね


松兄は朝から人間ドックで留守だけど光一さんが迎えに出たから、もう帰ってくるはず。


嫌がるかと思ったけど

意外にも素直についてきてくれた。


ぎこちない会話の最中...

松兄も帰って来て...緊張の糸が切れたかな...

突然、静かに泣き始めちゃって


翔君が泣く姿なんて初めてで

どうしたらいいか分からない


せめて頭を撫でてあげたくて伸ばした手を寸前の所で止めた


僕に触れられるのは...嫌かもしれない...



松「智、今日は店に出なくていいからよ

ちょっと、翔と買い出しに行ってこい」


智「買い出し?」


松「おう、俺は昨日から何も食ってないんだ。

今日はバーベキューだ!着替えて肉と野菜買って来い。荷物持ちに翔を連れて行け。

雅紀とカズは屋上で準備だ。

潤は光一に迎えに行かす」


あっという間に段取りを組んでいく松兄


雅紀に背中を押されて部屋に押し込まれ

着替えを急かされた...


松兄ったら...何も食べてないなんて嘘。

午前中の健診が終わって病院で豪華な昼食が出たはず。

僕もここに来た時に同じ病院でカズと人間ドック受けさせられたから知ってるもん。


なんだがんだ賑やかだった家に今は潤と二人

翔君、淋しかったのかもしれない

だから、松兄はバーベキューするって言い出したのかな...


着替えてリビングに戻ると

もう翔君は泣いていなかった

松兄とカズと雅紀...三人で何が食べたいかを言い合って笑ってた


その光景に


今度は...僕が泣きそうになった...