松「もうすぐ、目を覚ますだろう。体の中から冷え切ってるからな...かなり寒がって震えてたんだ。しばらくはまだ体温が落ち着かないだろうからこのまま温めてやって」

翔「ありがとうございました」

松「俺は...なんもしてねぇの(笑)」

翔「いえ、松岡先生がいてくれたから安心していました。あの...米倉先生は?」

松「ああ。帰ったんだ。自分の患者が恋しくなったんだとよ」

翔「忙しいのに...わざわざ日本まで来てくださったんですね...」

松「ああ。アイツも院長の頼みは断らないからな...」

翔「あの...聞いても?」

松「なに?」

翔「米倉先生とは...どういう?」

松「幼馴染ってやつだな。幼稚園からずーーっと一緒。アイツがアメリカに行くまで」

翔「幼馴染なだけですか?」

松「はぁ!?そんな事、考えてたの?!お前バカだねぇ〜。俺とアイツは裸で相撲取っても間違いは起きないね。...(笑)」

翔「いや...お似合いだと思って」

松「ないないない。俺はね小さくてホニホニしてる子が好みなの。アイツの真逆な」


そうかぁ...お似合いだけどなぁ

翔「もう一つ...、院長と米倉先生って...」

松「アイツの父親、赤ちゃんの頃に亡くなっててな。母親も病弱で。給付型の奨学金だけじゃ医大で一人暮らしじゃどうしたって足りなくて。
院長の親父さんが足りない分と生活費、全額出してくれたんだ」

翔「全部ですか?!」

松「すげえよな?返さなくて良いって言う事だったけど無事に医者になってから出世払いでって事にしてもらったんだ。それも既に返し終えてるけどな。でも、それがなかったら...もしかしたら白衣の一つも買えなかったかもしれない...」

翔「院長って...何者なんですか...?」

松「ん?...(笑)。凄いのは親父さん。院長はただの耳と鼻と喉のお医者さんだよ(笑)
でもまぁ、俺はあの人を怒らせるのが一番難しくて...一番、おっかないと思ってるけどな」

翔「松岡先生達は子供の頃から院長とはお知り合いなんですね」

松「そうだな。俺の親父が院長の親父さんと知り合いでな、地元じゃ超ぉ有名な大病院の理事長だよ(笑)涼子のように学びたいのに経済的な理由で夢を追い続ける事が困難な若者に手を貸してくれてた。
その意志を院長も引き継いでいるよ。あの人、あんなトボケタふりして結構、やるんだよ(笑)」


そんな話をしていたら、ソファで眠っていた海斗が起き上がってピョンと立ち上がった。

「ぁとちゃん!!!」

海斗のキラキラの眼差しの先に
ぼんやりの目を開けた智君...

この...寝起きの顔は松岡先生だとしても
誰にも見せたくなかったんだけどな...



翔「智君。おはよう」