さて...

どう話そうか...

智君の知らない所で松岡先生や院長が親父さんについて調べてくれていた事を、"勝手な事を“ と怒ったりする智君ではない。
自分の事を心配してくれて、と、感謝するはず。

...智君の子供の頃の記憶はひどく曖昧なまま...

お義母さんは、智君に手をあげる父親から智君を守る為に自分から智君を連れて家を出た、と言っていた。
けれど、智君は父親は自分のせいでお義母さんに暴力を振るい家を出て行った、と記憶している。
子供の頃の楽しい記憶を全て掻き消した辛い記憶。どちらが正しいにせよ...智君にとって父親という存在は...良いものでは無いのかもしれない

松岡先生が言っていた通りで、もしドナーにとお願いされたら...智君は、どうするのだろう...

断れなくて今以上に悩むはず...

会わせたくない...
絶対に無理をさせたくない...

智君の事だ
会ってしまえば
きっと...。


良く眠っているのを確認して
俺は...自分の仕事部屋に行き

お義母さんに電話をする事にした


しまった...

携帯が使えないんだった...

お義母さんも俺達と同じキャリアだ...


確か固定電話はなかったはず...


全く...こんな時に
不便な事だ...

タイミングよく
手の中の子機が光った

音が鳴る前に通話ボタンを押す...


ーもしもし?...