翔「おかえり。電話も繋がらないし…心配したよ?」

智「うん…翔君、ごめんね...。僕、翔君に聞いて欲しい事があるんだ...」

翔「うん。
俺も...ごめん...。朝、あんな風にしちゃって...。
じゃあ、帰ってからゆっくり話してくれる?」

智「うん…。僕が悪いんだ...。
カイ...いい子にしてた?」

翔「うん...海斗も心配してたよ?おやつも食べないし(笑)...海斗?さとちゃんと食べような、ゼリー」

海「ぁい!!」



˚✧₊⁎⁺˳✧༚



オヤツも食べて、安心したのか智君の枕に埋もれて海斗は眠ってる
こんな時間に寝ると夜が眠れないかもしれないけど。今日は海斗も頑張ったから、良しとしよう


智「翔君...あのね...」

☆*:.。 .。.:*☆

コインランドリーで父親だと名乗る人に声を掛けられて、智君は今も完全には信じていないけど...でも、なんだか初めて聞く声じゃない気もして、もしかしたら本当に父親かもしれないとも思ったようだ。
音を失っていた間は、それまでに耳にした音を繰り返し頭の中で再生して忘れないようにしていたと話してくれた事があった。

その声が父親の確信はないけれど、この人のせいで何か良くない事が起こりそうで怖かったと...

そりゃあ、いきなり生き別れた父親が訪ねて来たら...何事かと思うよな...
お義母さんは、お義父さんと別れた経緯を詳しくは智君には話していない。

その人は今、「病院にいて智君に頼みたい事がある」と伝えてきたそうだ

だいたい松岡先生が聞かせてくれた内容と合っている。

その頼み事が、智君は...入院費の類なのだろうと考えた...でも、俺に黙ってお金を融通する事はしたくない、だから…俺に知られる前に断って今後一切、会いに来るとか止めてもらおうと伝えに行こうとしていたが、携帯が使えないという不測の事態に右往左往していた所に偶然、相葉君に見つけてもらえたそうだ。


本当に、相葉君に出会えて良かった...

松岡先生が言う通りなら、再婚して生まれた我が子を助ける為に、手放した息子を探してわざわざ接触して来た。
我が子想いの優しい父親だろうと思う。
けれど...、同じ息子という立場の智君は捨てたも同じ...。病気の我が子可愛さに理不尽に何か仕掛けて来ないとも限らない。

一人で会いに行かなくて正解だった...


翔「智君がね、何かに悩んでいるのは分かっていたんだ...話してくれるのを待とうと思っていたんだけどね、どんどん元気が無くなってくるし、今日だって...連絡が付かなくて
どれだけ俺たちが心配したと思う?
何処かで倒れていないか...誰か悪い奴に連れて行かれていないか...って」

智「ごめんなさい...」

翔「怒ってるんじゃないよ?心配していたんだよ。俺も海斗も智君が大切なんだ」

智「うん…ありがとう…」

そっと手を伸ばして胸に収めると
素直に身を任せてくれる...

本当に...何事もなく戻って来てくれて


良かった...


俺に話せた事で安心したのだろう...

一瞬で力が抜けた


海斗の隣、俺の枕に小さな頭を乗せてやる


コロンと寝返りをうった海斗は
智君の香りと体温を求めて智君の腕の中に無事に収まった