テッテッテッテ...


ん?


タッタッタッタッタタ...


んん??



翔「海斗?」

海「シーッ!」
左手の薬指で "静かに!" と注意された。

右手にはハンカチ。
それも、水で濡れたハンカチ。
まだ上手に絞れない海斗の手に握られたびちゃびちゃのハンカチから垂れた雫が点々と洗面所から続いている


翔「どうした?」

右手のハンカチの雫が零れないように左手でお皿を作ってゆっくり歩く
幼児の割に体幹が良いのは智君譲りだ。

どうやら寝室を目指しているようだけど...

5分ほど前に様子を見に行った時、智君は穏やかな寝息をたてていた。
熱も下がりいつもの静かな寝顔だった。

でも...

いつものツヤツヤした唇とは違って少しかさついていたっけ...
だからか...。

翔「海斗?もう少しハンカチ、ぎゅーしなきゃ、さとちゃんビックリして起きちゃうぞ?」

海「ぶぅ...」

尖んがった唇も智君譲り(笑)


智君が幼い頃にお義母さんにしてもらっていたように、海斗もまた智君に胃腸風邪の時に唇を濡れたタオルで潤してもらっているから、同じ事を智君にしてやろうと考えたんだろう

優しい子に育ってくれた。

優しい子に育ててくれた。


程よく絞ってやったハンカチを手に
智君の元へと行き
優しく...本当にチョンチョンと唇を撫でる海斗

ん?

ふふ...起きてるね(笑)


翔「海斗、さとちゃん嬉しそうだね。ほら、笑ってるみたいだよ?
もう少し、寝かせてあげよっか?」

ふにゃん、と笑ってコクンと頷き
そおっとベッドから降りると
俺の手を取って「お静かに!」と言わんばかりの精悍な顔で寝室から連れ出された。


もうしばらくすると
智君も起きてくるだろう。

どこまで隠せるかは分からないが
努めて「いつも通り」を心掛ける事にしよう。


ソファーの上でバナナを頬張る海斗
不思議と智君の体調とリンクする海斗がバナナを美味しそうに食べているからもう大丈夫だとは思うが...。

何か作ってあげようと冷蔵庫の中を確認していたら、静かにリビングのドアが開いた

智「翔君...ごめんね、心配かけちゃった...」

翔「智君...、どう?ラクになった?」

智「うん(笑)ありがとう。お腹すいたよね?何か作るね」

翔「いいよ、休んでて?俺、何か美味いもの...」

智「作ってくれる...の?」



翔「相葉さんトコで作ってもらってくる(笑)」