智「もう...大丈夫。熱ない...ご飯...作る」

翔「ダメだよ。ご飯は俺が用意するから、そのまま寝てて」

智「...カイの...ご飯...。」

翔「智君。海斗は俺達二人の子供だよ。俺だって海斗の父親なんだから、海斗のお世話はちゃんと出来るよ」

智「...そんなの分かってる...。もう、大丈夫なんだよ...だから…」

翔「大丈夫じゃないだろ?まだ、こんなに体が熱いのに。俺じゃ不安?海斗任せられない?」

智「...そんなつもりで言ったんじゃない…」

翔「それなら...横になって?海斗が心配してる」


これは決して喧嘩じゃない

智君の幼い頃のご両親との記憶はいい物ばかりじゃなかった、曖昧な記憶のなかでも強烈に覚えているのが "喧嘩をしている両親" なのだそうだ。大人になって、その喧嘩の原因の殆どが自分だったと悟り余計に傷を深くしいつまでも心を痛めていた。

だから、絶対に海斗の前で喧嘩はしないと決めている。改めて申し合わせて決めたのではないけれど俺達の暗黙のルールだ

いくら仲の良い俺達だって人並みに喧嘩はする。
いつも俺のつまらないヤキモチや二人を過保護にし過ぎるとか、周りからみれば至って微笑ましいものだ。

けれど...

人の心にとても敏感な海斗だから、今の俺達の会話がいつもの穏やかなものと違うのを感じ取ったのだろう...今にも泣き出しそうな顔で俺達を見ている


智「...冷蔵庫にお豆腐があるから、鰹節と出汁醤油かけてあげて...お味噌汁は昨日のがある…ミートボールもチンしてあげて?あ…翔君のご飯...えっと…」

翔「俺は適当にパン焼いて食べるよ(笑)ご飯食べて片付け済んだら松潤の所にいくよ?それまで寝ておくんだよ」

智「...うん...。
カイ...ごめんね、僕は大丈夫だから翔君とご飯食べてね」

智君にそう言われても離れたくないのだろう。
智君にしがみついたまま動かない。

仕方ないか...

智君にはスポーツドリンク、海斗には俺にでも作れるバナナジュースを取り敢えず飲ませる。

時間はもうすぐ7時半...もう電話してもいいかな…取り敢えず、メールで状況を先に知らせる事にした。

すぐに既読が付いて、電話をくれた。
海斗も一緒で構わないから直ぐに連れてくるように言ってくれた。
外来の診察中に診てもらう事を嫌がる智君への気遣いだ。

大丈夫だと言い続ける智君を宥めてそのままの格好で二人を車に乗せた。