春の風が頬を掠めていく

今年はまだ、濃い色の花びらは舞い散る事はなく
ただ...枝を優しく揺らしている


少し伸びた前髪を
鬱陶しそうに指ではらう仕草さえ
綺麗で..

どうしてだか...

儚くて...


捕まえておかないと

何処かへ

誰かに

連れて行かれてしまいそうで

思わず伸ばした俺の手より先に

智君に辿り着いたのは...



智「ん...?、カイ...どうしたの?」


智君の太腿に抱きついて動かない海斗の
アヒルの尻尾のような後ろ髪を撫でる手を
今度こそ俺が捕まえる。

智「ふふっ...翔君まで...どうしたの?」



˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚

しょくんが、お花見に行こうっていうから
ぁとちゃんと、三人でいつもの公園に来た

少し前まで、ただの棒だったのに
いつの間にかキレイなピンクのお花が咲いていて
とってもキレイ...。

でも、そのお花を見てる、ぁとちゃんが
お花よりキレイで...

しょくんは、ぁとちゃんしか見てないから
知らなんだ...きっと。

さっきから、ず〜っと、ぁとちゃんを見てる人が沢山いて写真とってる人もいて

それがとってもイヤだから

ぁとちゃんに
くっついた。


見ないでぇっ!!
写真、撮っちゃダメっ!!!

ぁとちゃんは

ボクとしょくんの!!!


翔「帰ろっか?海斗、オネムかな?」

智「うん...。カイ?眠い?抱っこする?」

翔「俺が...」

智「ふふ...大丈夫」


ぁとちゃんに抱っこしてもらって見た桜は

小さなハートがギュってくっついてた。


ボクも、ぁとちゃんの首にぎゅーっとくっついた。



智「ねぇ、翔君。カイ、可愛いから誘拐とかされたら...どうしよう...」

翔「勿論、海斗もだけど...貴方も、ね...」

智「...?」

翔「気をつけて?」


智「ふふ...。しんぱいしょー(笑)
何処にも行かないよ...。二人のいる所が僕のいる所だからね」

何故か、春の...桜の季節になると毎年
翔の心配は尽きません...

一気に咲き誇り
潔く舞う花びらが

美しく儚い智に重なるのでしょうか...。