母「ちょっと見ない間に可愛さ増し増しね♡
カイちゃん♡おばばですよ♡」

カ「おっ♡ばばぁ♡♡」

海斗は母さんに任せておいて…

翔「智君、俺も来なくていいと言ったんだけどね、父さんがどうしても…って」

父「すまなかったね。このバカが怖い思いをさせたようで…許してやってくれ」

智「…そんな…謝るのは僕…。ちゃんと翔君にオサム君の事、聞いておけばよかったのに…それに、助けてくれたのに誤解して…ごめんね」

上目遣いで水分多目の丸い目で見つめられたオサムは耳を赤くして下を向いてしまった…

バコッ!

オ「イテッ…。なにすんだよ」

翔「赤くなってんじゃねぇよ…」

智「翔君…???」

翔「なんでもないよ。父さん、言っただろ?わざわざ来なくても良かったのに」

父「そう言うわけにはいかないよ。それに…智君に相談…と言うか…お願いがあってね…」


智「僕に…お願い?どんな?」


父「実はね、ウチの会社のデザイン部門を独立させようと思っていてね…どうだろう…?そこを翔と二人でやってくれないかい?」


今朝、"今から行く" と連絡が来て30分もしない内に顔を見せた三人。
今回、三人揃って来たのは勿論、オサムの件での謝罪もあるが父さんの一番の目的がコレだった。

今のアパートは智君と海斗にとっては大切な場所。俺も…智君と再会し縁を取り戻す事が出来た大切な場所。

だから、あの部屋から引っ越す事なんて考えていなかったけど…父さんと母さんの想いは智君の "親" 、海斗の "祖父母" としての深いものだった。


母「さとちゃんは、これまで借り住まいばかりだったでしょう?海斗も今からどんどん活発になっていくわ。だからね…お父さんと話していたのよ。
貴方達に…家を持たせてやりたい、って」


"私が用意するのは土地と事務所の建設費。その事務所の上階に自宅をと思うなら…それはお前が払いなさい"

父さんが事務所の建築予定地に考えているのは、今のアパートから徒歩で3分程の所。
智君がこの地を離れたくない気持ちにも、ちゃんと寄り添ってくれている。
父さんの会社にデザイン部門が必要かと言われれば答えはNoだ。全くとは言わないけど。

仕事をしながら子育ても出来る…
願ったり叶ったり…


智君は…ほんの少し考えて
海斗を見つめてから俺に…

智「翔君…、僕、嬉しい…」


母さんが気付かれないように小さく息を吐いた。

"いつも遠慮ばかりして…"と智君の長所は、母さんに対しては短所だと日頃ぼやいていたから
母さんも嬉しかったに違いない。

俺にはセンスと言うものが皆無だから…

翔「智君に任せるからさ…住み心地の良い家、考えてね」


智「うん!」


いっぱい涙を溜めた智君の目から溢れた涙を見て
海斗がガルガル吠えた相手は、どうしてだか…

父「海斗ぉ〜…じじぃは、さとちゃんを、いじめとらんよぉ〜…」


病室が笑いに包まれた…