背中をトントンしてあげると
いつの間にか眠ってしまったカイ。
静かに僕達を後ろで見守っていてくれた翔君。
振り向くと、唇を横に引っ張るような優しい笑顔で木漏れ日を見てる
きっと…翔君にも見えたんだね
あの光が空に昇って行ってから
カイの声は聞こえなくなった
『さとちゃん、大好き』
それが、最後に僕の心に届いたカイの声
僕も…僕は…
『愛してる』
聞こえたかどうかは分からないけど
…きっと、君はキョトンとするんだろうね
いつか…教えてあげる
"愛してる" は "大好き" をいっぱい集めた言葉
大好き大好き大好き…
その先にあるのがね
"愛してる"
翔「智君…」
翔君が後ろから僕の肩に手を置いた
智「…ごめんね…いつも迷惑かけて…」
翔「智君はさ、よくそう言うけど…
迷惑だなんて思った事は一度もないよ。心配はさ、よくさせてもらってるけど(笑)
でも、その心配もさせてもらえないのは寂しいよ。俺ね、頼りないけど、智君と海斗の不安を全部受け止めるだけの器は持ってるつもりなの」
智「翔君は頼りなくなんかない…」
翔「ふふ…。なら、もう遠慮はしないで?なんでも話してよ。爪切り過ぎて深爪が痛い!でも、虫歯が痛い!でも…なんでもね。
今は?今は何か話したい事ない?」
智「ん…。翔君。家に帰りたい…海斗と翔君が一緒じゃないと…眠れない…」
翔「俺も。それに…この天使もね。
あのさ…
海斗もいつかは俺たちの元を巣立っていくよね…
それまで…
俺と智君、二人で大切に育ててやろうよ。
海斗はね、俺達の家族の形を否定したりしない。
すげぇ上空を飛ぶカイトの糸はとても一人でなんて握ってられないよ。この子はきっと自由奔放に色んな事に興味を持って、それを極めるまであちこち飛び回るよ(笑)智君と俺の子だから(笑)
二人で、絶対に離さないでいてやろうね…」
翔君は全部、お見通し…
ありがとう。
糸が足りなくなっても
翔君ならきっと継ぎ足して繋いでいくんだろうな。地球の裏側に届くかもね(笑)
糸が絡んでしまった時は僕が解いてあげる。
翔君は不器用さんだもんね。
絡まった糸の先に必ず海斗がいるのなら、どんなに絡まった糸でも、気が遠くなる時間をかけても解いてあげる自信、僕にもある。
何度でも言うよ
ありがとう。
大好き大好き大好き大好き…
愛してる…
等閑の恋 2 ー終ー