智「あのね、僕は耳が不自由だったけど、カイが僕のお腹に来てくれてから、可愛い声が聞こえていたんだよ。あれは…カイの声だね?」
海「うん!僕、ずーっと、さとちゃんにお話ししてたよ」
智「やっぱり(笑) ありがとう。そして、今も…カイは一生懸命に僕を助けてくれているね?」
海「…僕は…僕が産まれたから…だから、さとちゃんは…」
智「違うよ。カイが思っている事は全部、間違いだよ。
僕ね、海斗が僕の子供で、凄く嬉しいんだよ…ありがとう、産まれ来てくれて。
ありがとう…僕を "母さん" にしてくれて」
翔君の家を出て...僕は...
何もかもを諦めて終わりにするつもりだった...
でも...
智「海斗が…僕のお腹に来てくれたから…
豆粒みたいに小さな小さな君が
僕を一生懸命に励ましてくれたから
僕は…生きる事を続けられた。
そして君に逢いたいという願いが叶った
それだけで充分だったのに
また、翔君と仲良くなれた、
海斗…。
全部、君のおかげだよ。
君の命が
僕を幸せにしてくれている…」
"約束する…もう、辛い時は我慢しないから…翔君にも、ちゃんと伝えるから…だから、カイ…
これからは、海斗の "音" で僕とお話ししよう?ゆっくりでいいよ…カイのスピードでいい…
もう僕はね…カイの声が耳で、ちゃんと音で聞こえるんだよ…
一緒に、神様に…ありがとうを伝えよう?」
僕のお腹にカイを宿してくれてありがとう
海斗の母さんに僕を選んでくれてありがとう
カイとお話し出来るようにしてくれてありがとう。
こんなに沢山の幸せをありがとう…
本当に…ありがとうございました…」
神様…
どうか…僕が海斗に背負わせた荷物を降ろしてやって下さい…
海斗には自由でいて欲しい
まだ幼い子供が親の心配をしながら生きて行くなんて…わがままだって言えない子になってしまわないかと…心配なんだ
僕は…僕達は
海斗が望む事なら、なんだってする。
海斗が誰かの物を "横取りして来て"と言っても…?
…うん、取って来るよ
海斗が望むなら。
でもね、海斗はそんな事言わない。
そんな事を言うような子には僕も翔君も育てないし、カイは、そんな子にはならない自信があるから。
ね、神様...そうでょう?
もう...僕は何一つ諦めたりしない
命を粗末にも絶対にしない
海斗を膝に乗せてブランコを揺らす
空を見上げるカイに倣って僕も見上げる
さぁ…そろそろ…
神様からの贈り物を
お空に返そうか…