子供の頃の僕の記憶は曖昧で
時系列も滅茶苦茶にしか思い出せない
楽しい思い出もあるはずなのに
記憶に残っている事は大半が
淋しさや哀しさがワンパッケージになっている。
決して母さんを責めているんじゃない…
母さんには、感謝してるから。
翔君が一つずつ丁寧に僕の子供の頃の話を母さんから聞いて教えてくれた。
僕は、間違いなく愛されていた...その愛の形が丸か三角か四角の違いなだけで、僕は母さんの形で愛されていた。
自分が親になって…本当の意味で母さんの愛を知った。
カイが僕に教えてくれたんだ、親が我が子へ捧ぐ愛情に嘘や偽りがない事を。
僕のお腹で育つ命を
何度も…何度も諦めかけた
でも、ギリギリの所で蘇る光景
それは...唯一の鮮明な幼い頃の記憶
雲一つない青空に舞うカイト
僕より小さな男の子が父親だろう人に背中から手を添えてもらい大空を走らせていたカイト
羨ましかった
自由に…何に邪魔される事もなく
楽しそうに舞うカイト
そして…同じ物を見て笑い合う親子が…。
あの頃...何も望まず、欲しがらず生きていたはずの僕が...
ただ一つ…あのカイトが欲しいと願った。
松潤に、お腹の子がどうやら男の子だと聞いて生まれてくる子供へ贈る名前は決めていたんだ。
実際にこの手に抱くまでカイの性別が男の子だけなのか確証は無かったけれど。
産んだのが僕だから
これから先、カイに苦労をかけるかもしれない。
普通なら受けない誹謗中傷や、うちの家族の形を心無い言葉で傷付けられるかもしれない。
いつか、"僕なんか産んでくれなければよかったのに" … そう、僕と同じ事を思うかもしれない。
でもね、僕は…嬉しかったんだ…
大好きな翔君からの贈り物。
嬉しかった…本当に。
大好きな翔君の血をひく家族が僕に出来る事が。
でも…必ずいつか…僕という存在がカイを苦しめるに決まってる
だから
その時は…
二人のそばを離れようと思っていた。
でも...もう今は...
そんな事...ちっとも思っていないんだ...