智「翔君…あのね…」

翔「智君…先に俺の話、聞いてくれる?」


*・゜゚・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゚・*


一晩中、智君の枕に抱きついて眠る海斗を見ていた
寝顔は智君そのもので。
いつもより寝顔に幼さが足りないのは隣にいるはずの智君が今日はいないからだろう
ぷっくりとしたほっぺは産まれた頃から変わらない…と、言っても俺は産まれたての海斗をこの目で見る事は出来なかったけど。

海斗は…もしかしたら智君の心の中が見えているんじゃないかと思う事が度々ある
智君の体調に関しては特に。

言葉で説明なんて出来ない。
出来た所で信じてもらえないと思う。

智君が体調を崩すと必ず海斗も熱を出す。
海斗を病院に連れて行っても診てもらう頃にはすっかり平熱。
逆についでにと診てもらう智君の方が深刻な事が殆どだ。

それはまるで、俺に心配かけまいと具合が悪いのを隠す智君を病院に連れて行く為に海斗は発熱するんじゃないかと疑うのに充分な頻度だ。


昨日…夕方に発熱した海斗


あの朝、俺が家を出る時点で海斗はまだいつもより熱があった。
泊まりの予定をキャンセルして日帰りにするつもりではいたけど、お世話になった二人の門出を智君の分まで祝福したい…その気持ちが少しだけ優ってしまった…
あの時、東京に行かないでいたら…こんな事にならなかったかもしれない

今回の入院は車でいうところの車検のような物だと松岡先生は言っていた。
城島先生は、今回も簡易ベット持ち込んで泊まっていいと言ってくれたのに、海斗は首を横に振り帰るときかなかった。智君の事を見ようともせず抱っこした俺の胸に顔を埋めたまま帰ってきた。

海斗は…どうして今日、智君の病室に泊まると言わなかったのか…
どうして…智君に触れようとせず俺から離れずにいたのか…

海斗の心が悲しい声を上げているんじゃないか…

俺にはその声を汲み上げる事が出来ない

智君にしか出来ない


*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


翔「さっき、廊下で松岡先生に出会ったんだ。
少しならテラスに出ても良いって言ってくれたからさ…出てみない?案外、今日はあったかいんだよ」


智「…うん」


翔「ねぇ智君。俺には海斗の声が聞こえない。だから…智君、海斗の心の声を聞いてやって?」


俺の言葉に動揺しないという事は、松岡先生に聞いたのだろう…俺が漠然と感じている事を。

智君は足にしがみついていた海斗の目線までしゃがみ抱きしめて

智「カイ?お外で僕とお話ししようか?」

静かな優しい声でそう伝えた