翔「智君!」
松「動かすな!」
海「…ふぇ…ふぇ…ッ…あ〜ん」
松「櫻井君、君は海斗を。
長瀬!この船、動かせるか?」
長「これは無理だ。完全に乗り上げてるからな…俺の方に移せ」
松「あまり動かしたくないんだが…。
仕方ない…誰か足を持ってくれ」
俺は…動けないでいた
倒れた際にぶつけた額からは出血して
顔は恐ろしく白い…
誰の、海斗の声にさえ反応しない智君を前に
体が震えて動かない…
海「あー!!!」
海斗が智君にじゃなく俺にしがみつく
"シッカリしろよ!翔君!" と言われた気がした
翔「俺が…俺が…」
智「う…ん…」
翔「智君!」
智「…しょ…く…どうしたの?」
松「智、お前は今、倒れたんだ。ぶつけた額が切れて出血しているが、大した事はない。
だがな、ちゃんと調べる必要がある。いいな?このまま港に戻って救急車での搬送になるからな」
智「そんな…大袈裟だよ…カイだけ、お願い…」
翔「ダメだ。ちゃんと診てもらおう」
そう言いながら膝裏と脇の下に手を入れた。
松岡先生は、何も言わずに頷いてくれたから俺が一人で智君を長瀬さんの船に移す事は構わないのだろう。
誰にも…触らせたくない…
智「翔君?歩けるよ?」
翔「ダメ。大人しく目を閉じていて」
智「カイは…カイはどこ?」
松「ここに居る。ほら」
海斗が松岡先生に抱っこされて顔を胸に埋めてこっちを見ない…疲れたのか…また具合が悪くなったのか…どちらにしても松岡先生が居てくれるから大丈夫…そんなふうに軽く考えていた俺は
思い知る事になる。
いつも相葉君のお母さんが言っている
"子供は教科書通りには育たない"
を、改めて思い知る事になる。