松岡先生の質問の意図が分からなかった…


…相葉君といい、松本さんといい…まるで俺が智君に相応しいか品定めされているような気さえする…


どう答えれば正解なのか…


松「難しく考えないで思った事を言ってくれて構わないんだよ。正解なんてないし求めていない」



そうだよ…正解なんてあるもんか…

それに…この人が俺に何かを求めているのだとしたら、きっと智君と海斗の幸せだろう



翔「智君を、女だから男だからと考えて好きになったのではないので…好きになったのが智君で、その智君が両性を有していたと言うだけで…」


松「もともと知っていた?」


翔「いえ…まだ子供の頃は普通に男だと思っていました。一緒に住もうと言った時に、断る理由として話してくれました」


松「それを聞いてどう思った?」


翔「どう…って…。智君のように両方の性を持つ人が稀にいる事は何となく知っていました。

その事が智君の健康を害するのなら話は変わってくるけど、外見は子供の頃から見てきた智君と変わらないし一緒に住んでいた頃は健康に問題もなかった…だから、正直…


あまり、気にならない…と言うか…。

どっちが良いとか考えた事もなくて…

どちらでも…智君に変わりないので…」



松「そうか!!」


大きな手でバンバンと俺の背中を何故か嬉しそうに叩きながら笑う松岡さん。



痛いはずなんだけど


痛くなくて



ここに来て…


本当の意味で俺と言う男を認めてもらったような気がしていた…



松「簡単に言えば、君は男の智を好きだと言う事だよな?

俺は精神科の医師でもカウンセラーでもないからな、智が思ってる事が手に取るようになんて分かんねぇけど。

智が君を海斗の父親だと認めないのは怒っているとかじゃない」


言い切るんだ…


松「智の中で優先順位の一位は海斗。

自分の事は一番最後だ。

君は…二位、いや、海斗と同率一位だな。

君達が悲しむ事がないように…だから、認めないんだな…。


もし、君の仕事柄、二人の事が世間に知られた時、君のパートナーが男で、それなのに子供がいる…有る事無い事、痛くない腹を探られて…

そうならないようにするには…智が女性として生きて行く方がリスクは最小限で済むかもしれない…

智はな…海斗を妊娠して母親として海斗を自分の戸籍に登録したんだよ。

だから…書面上は女性だ。


身体の機能も見た目も中性的であっても男性。

でも、戸籍上は、女性。



智はこれからも今まで通り生きて行く。

子供を産んだけど、無理矢理に女性にならうとはしないだろうし、必要もない。

君なら…智に無理矢理、女性の格好をさせたりしないだろう??

智を大事にしてやって欲しいんだ。

俺達が普通だと思っている事でも智にはそうじゃない事が沢山ある。


頼んだよ。


幸せにしてやってくれなきゃ絶対ダメなんて言わない。

ただ…泣かさないで欲しいんだ…泣くなら…涙を流させてやってくれ…もう、泣く事すら我慢しないで済むように…


あの子は誰よりも傷つき

誰よりも幸せに遠い所で生きてきた。

でも、君と出会い海斗を授かり幸せを知った。

だからこそ...余計に怯えている

あの二人を頼んだよ…」



そう俺の顔を覗き込んだ顔は

ガハハと豪快に笑った松岡さんではなく…

担当医でもなく…兄?いや…

父親の顔をした松岡先生だった。