二「もしもし…」

智君を捜し続けて二年…なんの手掛かりもなく時間ばかりが過ぎていた。

二宮さんからも一度も連絡はなかったのに、突然スマホの画面に "二宮" の文字。

翔「もしもし!ご無沙汰しています」

二「こちらこそ…まどろこしい挨拶は抜きにさせてもらいます。櫻井さんはまだ大野さんを探していますか?」

翔「勿論です!何か…何か分かったんですか?!」

二「ええ…会ってお話しする事は出来ますか?」




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二宮さんは智君が施設を出た後、住み込みで働いていたパン屋のご夫婦を探し出したそうだ。
俺もそのパン屋さんまでは辿り着いていたけど…すでに何年か前に閉店していて、その先は掴めていなかった。

そのご夫婦が言うには、智君は大学病院の教授の研究に協力し多額の謝礼を受け取りご夫婦に渡したそうだ。気持ちだけで良いと言うご夫婦にお礼だと智君もひかなかったそう。
ご夫婦はそのお金には一切 手をつけず、いつか智君に返そうと智君の名義の口座に預けてあるそうだ。
恐らくは経営が上手く行かなくなったお店の助けにと思ってくれたのだろうと…。
けれど、ご夫婦は既に高齢な事に加え智君を無事に送り出す事ができた時には店を閉めて二人の時間をゆっくり楽しむ事にしていたそうだ。

ちゃんと、そのつもりだと伝えておけば研究対象になんて自らはならなかったかもしれないのに。
そう涙を流したそうだ。

その時の教授が松岡というそうだ。
ご夫婦が智君を想って今も涙を流すような酷い研究だったのか…?

その松岡教授を調べていたら

とうとう…智君へ繋がりそうだ...と。


場所は…四国…


智君…そんな所に居たんだね…


翔「…元気に…しているんでしょうか…」

二「最近、頻繁に松岡先生の診察を受けているそうですが…松岡先生と直接コンタクトが取れていないので実際、本当なのかも確証はありません。
ですが…私は、なんの根拠もないけれど、そこに居るような気がするんです…」

話しながら操作していたタブレットの画面を見せてくれた。
そこには、ラーメン屋さん?の看板…

二「この看板…私は大野さんが描いたんじゃないかと思っています。このお店があるのも松岡教授が勤める病院と同じ地区です」


翔「…俺、行って来ます」

二「世間に顔が知られている櫻井さんが一人で動くのは危険だ。ご一緒しますよ」


有難い申し出にお願いする事にした。

スケジュールを調整してもらい、なんとか二人とも四日間という時間を確保した。





智君…



逢いに行くよ…



随分と待たせてごめんね。