ニ「最低…ですね」

翔「反論の余地はありません...」

ニ「ここまで話してくださったお返しに私の事もお話ししましょうか…。
実はね…私もこの歳まで付き合ってきた相手は…男ばかりです。だから…貴方の気持ちも分からないでもない…確かに身体を繋げるのは異性の方が簡単だ。余計な準備は必要ない勝手に濡れて簡単に中に入れられる。ただ、中に出さないようにすればいいだけ」

俺は二宮さんの言葉にそこまで驚きはなかった。そうじゃないかと思い始めていたから。
智君に似た背格好…受ける側かと何故か思い込んでいたけど違うのか…

ニ「私も…何度か相手に逃げられました。
でも、それが理由なら仕方ないと納得しました。
だって…どうにも出来ないから。性格云々なら改善は出来る。でも、どうしようも無い。
本来、挿入する場所じゃ無いのですからね。
それでも繋がりたいと思ってくれる気持ちが嬉しいと…だから、そこを否定されると、もう何も言えない…大野さんは至極真っ当な答えを出した」

翔「……いっ時の迷い…」

ニ「タチの立場はそう言います。それを悪いとは私は言いません。
でもね、私達だって男です。
女だって普通に抱けるんだ…。
でも。
それを大野さんは決してしなかったでしょう。
貴方は知らないでしょうけど、耳が不自由だろうが大野智には言い寄る女は少なくありませんでしたよ。それは貴方というパートナーがいたからでしょう?」


翔「捜します…どんなに時間がかかろうとも。たった一週間なのに苦しくて…寂しい…」



ニ「苦しい...?そうでしょうか…ただ貴方は自分の不誠実への免罪符が欲しいだけじゃないんですか?許してもらいたいだけ。そしてまた必ず同じ事を繰り返すでしょうね?
その度に大野さんの傷は深くなる。
だが彼は貴方を責めたりはしないでしょうし…もう、このまま、そっとしておいてあげれば良いんじゃ?」

翔「それは出来ない。俺には智君が、智君には俺が必要なんだ…」

ニ「はぁ〜…
賢い癖にわかんねぇ奴だなぁ…。
だったら!!!どうして大野さんは出て行ったんだ!!大野さんがもうアンタを必要としてないんだよ!!わかんねぇの!?あの人は一人で生きていけるだけの財も、周りが放っておかない人柄も充分に持ってんだ!!
なんの確約のない同性カップルはな、一度の拗れで簡単に絡まった塊は切り離す事になるんだよ!アンタ…普通に女もイケるんだろ?
なら、もう…元の道に戻れよ!
それが…大野さんの望みでもあるんじゃねぇの?!」

二宮さんの急変した物言いに一瞬怯んだが負けるわけにいかない。

どう伝えれば分かってもらえるのか考えながらも
智君の近くにこんなにも大切に想ってくれている人がいた事に嬉しく思っていた