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“ あめ氏へ。
あめ氏とは、幼稚園に入る前からの付き合いで、もう随分長い付き合いになる。
一言で表すなら、幼馴染みと言うのが最適だと思います。
あめ氏がギターを始めたのは、小学校の2年か3年の時だったと記憶しています。
それに触発されて、俺はピアノを、シモがベースを始めました。
3人で演奏を、···当時のレベルでは合奏を始めた頃は、音が全然合わなくてバラバラで、それぞれがそれぞれの意地を張って、3人で結構な言い合いをした事がありましたね。
結構な回数の言い合いを重ねましたが、今では一言二言で、お互いの言いたい事が伝わる仲だと思っています。
中学2年か3年くらいから曲を作り始めたあめ氏の作詞力、作曲力、ギターの演奏力は、頼もしいと思っています。
これからも Breeze を、宜しくお願いします。
阿佐野憲章 ”
阿佐野の手紙を照れながら聞いた雨都は、改めて感謝を述べると、会場から大きな拍手が上がった。
雨都は、手にしているステルンベルギアの鉢植えと、阿佐野からの手紙を有坂に預け、Breeze のメンバーは、ライヴを再開する為、定位置に着いた。
「それでは、ライヴを再開しようと思います。まず、新曲の snow White、冬の曲の Snow Crystal、そして、あめ氏の名曲、窓を開けてごらん。3曲続けて聴いてください。」
雨都のソロステージの間に、気持ちが落ち着いた早乙女がそう言って、snow White、Snow Crystal、窓を開けてごらんの3曲を演奏すると、大きな拍手が上がり、拍手が収まるのを待ってから、最後のMCに入った。
「有り難うございます。何か、こんなに真剣に聴いてもらえて、こんなに大きい拍手を頂けると、改めて有り難いのと同時に、やっぱり照れ臭いですね。」
と言った雨都に、
「それはね、あめ氏の曲が、ちゃんと評価されてるって事だよ。窓を開けてごらん、だけじゃない、全ての曲。」
阿佐野がそう言うと、再び大きな拍手が上がった。
雨都が照れ臭そうに感謝を述べると、
「さて。私達のライヴの時間も、残り僅かとなりました。今日の最終盤の3曲は、新曲は入ってないんですが、最後まで盛り上がって行きましょう❗️」
と、早乙女が言い、霜月に曲紹介を振った。
「はい❗️あめ氏の曲はみんな好きなんですが、最後の3曲は、私の特に好きな3曲を、演奏させて頂きます。君だけの為のラヴソング、smile again、TIME LIMIT、3曲続けて聴いてください。」
霜月がそう言うと、君だけの為のラブソング、smile again、TIME LIMIT を演奏し、大きな拍手を浴びながら、早乙女、篠森、霜月は、下手の舞台袖へ、阿佐野と雨都は、上手の舞台袖へと、下がって行った。
5人の姿が見えなくなった直後、間髪なくアンコールを望む声と手拍子が上がり始めた。
歓声と手拍子が最高潮に達した時、上手からは阿佐野と雨都が、下手からは、早乙女、篠森、霜月が登場し、更に大きな歓声と拍手が湧き起こった。
「アンコール有り難うございます。アンコールは、昨日も演奏した “ 初恋 ” の “ A side version ” を、···まぁ、あの、言ってしまえば雨都バージョンなんですが、それを聴いて頂きたいと思います。」
雨都がそう言い、演奏を終えると、会場からは拍手と、雨都への歓声が上がった。
初恋の雨都バージョンも、新鮮の様である。
「有り難うございます。今年の文化祭の時間も、残り僅かとなりました。僕らが演奏する曲も、次の曲が最後の曲となります。」
阿佐野がそう言うと、
「僕らは、入学して直ぐの頃から、活動が始まりました。桜祭りや野外フェス等、色んな会場で演奏の機会を頂き、全ての会場で盛り上がって頂きました。本当に有り難うございます。」
と、雨都が言い、
「有り難うございます。」
と言いながら、5人が一礼をした後、
「それでは、最後の曲を聴いてください。P - Rhythm❗️」
雨都がそう言うと、P - Rhythm を演奏し、文化祭2日目の Breeze の演奏は終了し、大きな拍手を浴びながら、舞台袖へと下がって行った。
演奏が終わった Breeze が多目的室に戻ると、
「ホームルームが終わったら多目的室に集合❗️」
昨日と同じく、Breeze が楽器を置くのを待ってから、顧問の中嶋が指示を出した。

時刻は17時になろうかと言う頃である。
各クラスでは、それぞれの部活や委員会から生徒が戻るのを待ってから、短めのホームルームが行われ、話も程々に解散となった。
ホームルーム終了後、Breeze と violet butterfly のメンバーは再び多目的室に集まり、中嶋が到着するのを待っていると、
「ごめんごめん、ちょっと話し込んじゃって遅くなっちゃった。」
そう言って中嶋がやって来た。
時刻は17時半になろうかと言う頃である。
中嶋は、手に持ったハンディーカメラを雨都に手渡し、モニターに繋げる様に指示を出すと、阿佐野と矢釜を連れて、一旦多目的室を出て行くと、数分後、午前の紅茶を持って戻って来た。
「外暗くなって来てるけど、一旦電気消すわね。」
テーブルの真ん中に午前の紅茶を置いた中嶋はそう言って、多目的室の電気を消した。
日没後の中庭を照らす灯りが窓から射し込み、また、ハンディーカメラが繋がれたモニターの光が、室内を照らしている。
電気を消した中嶋は、出入口の外側に出て合図をすると、ケーキを持った阿佐野と、ステルンベルギアの鉢植えを持った矢釜が、HAPPY BIRTHDAY を歌いながら入って来た。
「俺のは良いのに~。」
雨都がそう言うと、室内の電気が点けられた。
「苺タルト❓️」
と雨都が聞くと、
「苺のレアチーズタルトです🎵ベリー系のタルトとかチーズケーキ系が好きだって、阿佐野先輩から聞きました。」
と、有坂が答えた。
「そっか。ノリから聞いたのか。」
と、笑いながら言った雨都は、
「大正解❗️」
と、阿佐野に言い、右手の親指を立てると、
「因みになんだけど、あめ氏とシモのケーキ選んだのはやかしー達で、花は俺から。」
と、阿佐野が言った。
雨都も霜月も、阿佐野が花を選んだと言う事に、意外な表情を浮かべている。
一同は、切り分けられた苺のレアチーズタルトを食べながら、Breeze の初日の2ステージ目の映像を観る事に。
「皆楽しそう🎵」
「幸永先輩めっちゃ格好良い❗️」
「篠森さんめっちゃ笑顔で、凄い余裕そう。」
各々が色々な感想を述べ、Breeze の初日の2ステージ目の映像を見た後、30分程談笑すると、時刻は19時半を過ぎている為、楽器やモニターを片付けた後、解散となった。
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