.

「アンコール有り難うございます。昨日と今日、2日続けてのアンコール、凄く嬉しいです。」

そう言った矢釜は、涙で瞳を潤ませると、

「あの···、えっと···。」

と、言葉を詰まらせ、感動なのか、2日続けてのアンコールに感極まったのか、左手を口元に当てると、目から涙が零れた。

「···すいません。あのね、昨日皆も言ってたんですが、私達は、今年の4月に組んだばっかりなんですけど、2年生が私だけだったので、リーダーに推薦されて、断る理由もなかったから、そのままリーダーをやる事になったんですが、上手くまとめられるのか、盛り上げられるのか、プレッシャーが凄かったんですけど、夏にあった野外フェスも、今回の文化祭も、皆盛り上がってくれたのと、ホッとしたので、涙が溢れちゃいました。皆さん本当に有り難うございます。」

矢釜がそう言うと、大きな拍手が上がった。

拍手が収まるのを待ってから、

「アンコールは、家入レオさんの Pain と、大黒摩季さんの ら・ら・らを、演奏させて頂きます。」

古川がそう言うと、Pain と ら・ら・らを演奏し、大きな拍手を浴びななら舞台袖へと下がり、多目的室へと戻ると、

「あ~ん、泣いちゃった~。」

と矢釜が言うと、

「先輩急に泣くんだもん、吃驚しちゃった~。」

と古川が言った後、

「あやめろはそう言うけど、俺、やかし~の気持ち分かるよ。」

と雨都が言い、

「ホントですか?」

と、矢釜が聞いた。

「オリジナル曲の歌詞を書いたりんりんと彩っぺ、メロディーを書いたあやめろも分かると思うけど、オリジナル曲ってさ、聴いてくれるかな~?盛り上がってくれるかな~?って言う不安みたいなのがあるじゃん?リーダーのプレッシャーとか重圧とは少し違うと思うけど、オリジナル曲やり始めた頃はそう言う不安感みたいなのがあったから、やかし~のホッとした感覚は何となく分かる。」

と、雨都が言った。

「失礼しま~す❗️」

多目的室のドアがノックされ、新聞委員の柳原が顔を覗かせた。

「昨日の先輩方の2ステージ目の映像持って来たんですけど···。」

多目的室に招き入れられた柳原はそう言うと、

「有り難う。打ち上げの時に皆で観るよ。」

阿佐野がそう言ってメモリーカードを受け取ると、柳原は吹奏楽部と落語・漫才同好会に行く様で、多目的室では長居をせずに、第一音楽室へと向かって行った。

「それ観たい❗️」

violet butterfly のメンバーは、口を揃えてそう言ったが、現状ではその映像を再生する機材がない為、“ 文化祭後のホームルームが終わってから ” と言う話でまとまった。


時刻は13時半になり、第一体育館では、演劇部によるラプラスの魔女が、第二体育館では、吹奏楽部による演奏が始まった。

どちらも、1時間~1時間半が予定されている。

14時45分を過ぎて、間も無く50分になろうかと言う頃、第一体育館での演劇部によるラプラスの魔女が、終盤に差し掛かっていたが、第二体育館での吹奏楽部の演奏が終了し、吹奏楽部と入れ替わる様に、Breeze が舞台上へ行き、演奏の準備を始めた。

チューニングは既に終わっている為、ドラムセットを組み上げ、演奏の準備が整い、阿佐野が舞台袖にいる音響係に合図を送ると、音響係から文化祭実行委員へと準備完了の合図が送られ、

「それでは、只今より、軽音部 Breeze の演奏をお楽しみ頂きたいと思います。Breeze の皆さん、宜しくお願いします。」

と、文化祭実行委員が言うと、幕が開いた。


「軽音部の Breeze です❗️宜しくお願いします❗️」

と、阿佐野が簡単に挨拶をすると、光り輝く為に···、Message、愛言葉の3曲を演奏し、MCに入った。

「軽音部の Breeze です❗️改めまして宜しくお願いします❗️」

と、阿佐野が改めて挨拶をすると、自己紹介をする流れになり、

「最初は諷ちゃん❗️」

と、阿佐野が篠森を指名した。

それに対して、

「はぁ!?

と、篠森が不満そうに言うと、

「ひぃ!?

と、Breeze のメンバー、及び観客席から、声が上がった。

やはり自校と言う事で、観客席全体から声が返って来た為、嬉しそうにニンマリとした篠森は、

「ふぅ~~~🎶」

と言いながら、右手を突き上げた。

これは篠森の自己紹介での演出で、コール&レスポンスの要素が含まれている。

「会場にお集まりの皆さん、こんにちは~❗️Breeze のドラム担当、篠森諷で~す🎶今日は第二体育館のトリと言う事で、日没が近い時間ではありますが、最後まで楽しんで頂けると嬉しいです❗️」

そう言った篠森は、笑顔で両手を大きく振り、次のメンバーに早乙女を指名した。


「はい❗️Breeze を愛してくれる皆さん、こんにちは~❗️Breeze のリズムギター担当の早乙女杏奈で~す❗️」

指名された早乙女がこう言うと、早乙女のファンと思われる観客から、大きな声援が上がり、早乙女は嬉しそうに手を振って、その声援に応えた。

早乙女のファンは、男性よりも女性の方が、若干多い様である。

「聖が丘学園の在校生が殆どだと思いますが、中学の時の友達とか、バイト先の先輩とか後輩、卒業生も来てくれてるみたいですね🎵それから、お隣の聖が丘女子学院から来て頂いてる方もいるみたいで、楽しんで頂けたら嬉しいです🎵」

早乙女はそう言うと、次のメンバーに、霜月を指名した。


「はい❗️月々に、月見る月は多けれど、月見る月は❓️」

と言った霜月が、観客席にマイクを向けると、

『霜月の月~!!

と、霜月の親衛隊を始めとした観客が返した。

霜月の親衛隊は、男女比が半々程度で、どちらかに大きく偏らず、絶妙なバランスである。

「有り難うございます❗️Breeze のベース担当、霜月幸永です❗️さっき諷ちゃんが言ってましたが、今日は第二体育館のトリを勤めさせて頂きますが、軽音部の後輩の violet butterfly のライヴを観て頂いた方って、どれくらいいますか❓️」

と、霜月が問い掛けると、観客席にいる殆どの人が、violet butterfly のライヴを観ていた様で、殆どの人が手を挙げている。

「有り難うございます。violet butterfly のライヴ後の感想を聞いたんですけど、楽しかったとか嬉しかった、感動しちゃったって言う内容の事を、5人とも言っていました。5人とも、自信が付いたと思います。皆さん有り難うございます。」

と、violet butterfly に変わって、感謝を述べた霜月。

多目的室のモニター越しにそれを聞いていた violet butterfly の5人は涙ぐんでおり、矢釜に至っては、号泣してしまっている。

「さて。自己紹介とは違う感じになっちゃいましたが、私達のライヴも、最後まで楽しんで頂けると嬉しいです❗️」

と言った霜月は、

「次のメンバーは、Breeze の曲を作ってくれている、作詞・作曲担当のあめ氏❗️今日は噛まないでね🎵」

と、雨都を指名すると、

「やかましいわ❗️」

と、笑いながら言った雨都は、

「はい❗️え~っとね、Breeze のリードギターと、作詞・作曲担当の、雨都雅晃です❗️」

そう言った雨都は、

「それじゃあ、いつものやりますか!男子❗️」

雨都がそう言い、男子が大歓声を上げると、

「男子凄いね~🎵じゃあ次は女子❗️」

と続けると、女子からも大歓声が上がった上に、雨都がいる上手側の観客席の前方からは、

『あめし~様ぁ~~~!!

と言う黄色い声が上がった。

その方向に雨都が手を振ると、更に黄色い声が上がった。

「有り難うございます。女子も凄いね~。」

と、照れ笑いをしながら言った雨都は、

「この後も、まだまだライヴは続きますので、楽しんで行ってください❗️」

と言うと、最後のメンバーに、阿佐野を指名した。


「はい❗️Breeze のリーダーで、キーボード担当の、阿佐野憲章です❗️諷ちゃんとシモが言ってましたが、我々 Breeze は、今日の第二体育館のトリなんですが、Breeze は、文化祭でのライヴは今年で最後になりますが、活動自体が終わる訳ではなくて、まだまだ続いて行きますので、誤解の無い様、お願い致します。」

と言った阿佐野は、

「さて!それでは、演奏に戻ろうと思います。Run!Run!Run!、最近出来たRolling Rolling、そして彩り鮮やかに。3曲続けて聴いてください。」

と続けると、“ Run!Run!Run!”、“ Rolling Rolling ”、“ 彩り鮮やかに ” の3曲を演奏すると、中盤に向けたMCに入った。

.