人は育った環境やおかれた状況によって少なからず何らかのバイアス(先入観・偏見)を持っています。
これは、過去の経験を参考にしたり、ポイントになる点を絞ることで、ある事象についてより早く判断するためのものです。
しかし、多くの場合、バイアスによって導き出される結論は正確ではなく、これがもとで判断を誤ったりすることも少なくありません。

今回は『リファクタリング・ウェットウェア』の内容から人が持っている代表的なバイアスについて紹介します。

■ 人が持っている代表的なバイアス
アンカリング
特定の数値を印象付けられることで、他の判断の際にその数値に基づいた判断をしてしまうことです。
例えば、ある商品の値段をずっと気にしていると、まったく種類の異なる他の商品を見たときにその商品の値段をもとに価格を判断してしまうことです。

帰属の誤り
他人の行動を状況ではなく、人格のせいにすることです。
人の行動は置かれた状況に大きく影響されるます。したがって、行動が起こった状況を考慮しないことで正しい判断ができなくなります。

自己奉仕
何かがうまく言った際に自分のおかげと思うことです。
物事が成否には多くの要素が関係しています。したがって、自分の行為だけを特別な要因として扱うとその後に失敗を招きます。

結末欲求
不確実や未解決のものを、無理に明らかにすることです。
人は物事が明確にならないと不安を覚えるため、確定していないものに何らかの結論を与えようとします。
しかし、見確実な状況を正しく認識し、今後の変化の可能性を活かしたほうがよりよい結果を得ることができる場合があります。

確証
自分のお気に入りや先入観に当てはめようとすることです。
多くの物事を1つの理屈で判断することは不可能です。したがって、こういった傾向がある場合は判断が誤っている場合が多く、注意が必要です。

露出効果
なじみがあると好ましく思う。
ある状況でうまくいったものや慣れているものが、必ずしもベストな方法であるとは限りません。
場合によってはより悪い結果をもたらす可能性もあります。

ホーソン効果
観察されていると行動を変えてしまう。
前述したように人は環境で振る舞いを変えます。したがって、観察されているという状況ではいつもと違う行動を取る可能性があります。
この点から、その人の行動が普遍的なものなのかどうか気にする必要があります。

虚偽の記憶
過去記事にも書きましたが、人は記憶を思い出すと、同時にその思い出は書き直しが行われます。
したがって、今の記憶が実際の初期の体験とはずれている可能性があります。

シンボル化による縮小の誤り
脳は複雑なものを単純化したがる。
したがって、複雑な出来事のポイントだけを抽出して物事を認識する傾向があります。
しかしその結果詳細な情報が失われ、正しい情報ではなくなる可能性があります。
なお、失敗学によれば失敗の情報も目立つ情報だけが教訓として残され、失敗の本質とは異なるものになることがあるようです。

命名の誤り
物事に名前をつけるとそれが説明できたと思い込むことです。
本当に正しい情報をもとにして判断しているか、注意が必要です。


人はこれらのバイアスで判断した結果、その後の行動を誤ったり、感情的になったりします。
今の自分の認識がバイアスにとらわれていないか常に注意することが大切です。

また、人と接する際もこれらのバイアスを意識することで、コミュニケーションが効果的にとれるようになります。
詳細は別途投稿します。