8月7日。
第98回全国高等学校野球選手権が開幕。
母校、初の甲子園。
野球部OBとして待ち望んだ日だった。
入場行進で母校の名前がアナウンスされ、後輩たちが甲子園の土を踏みしめながら、歩く姿を見ているとこみ上げてくるものがあった。
どうしてもいい席から入場行進を見届けたくて早朝4時半には甲子園に並んだ。
49代表校が並んで一斉に前進してくる様は圧巻。
僕は甲子園は野球人にとって「最高の舞台」だと思っていた。
しかし、後輩たちは甲子園を「最幸の舞台」と表現した。
そして甲子園という「最幸の舞台」で「最幸の相手」と対戦した。
相手はセンバツ優勝校、春夏連覇を狙う智弁。
結果は1-6で敗戦。
甲子園で校歌を歌うという後輩たちの夢は叶わなかった。
しかし、彼らの姿は素晴らしかった。
最後まで終始笑顔を絶やさずプレー。
なんせ地区大会決勝で味方がエラーした際には、ベンチから皆が笑顔で一斉に「ナイスエラー!」とミスした選手に叫ぶほど笑顔を徹底したチーム。
同じく地区大会決勝で優勝を決めた歓喜の瞬間に母校のキャッチャーのとった行動はネット上で賞賛の嵐となり注目を集めた。
勝った智弁が校歌を歌い上げるとベンチ前で整列していた後輩たちは智弁に対して拍手を贈り讃えた。
最後までフェアプレー精神にのっとり相手に敬意を持って堂々と戦いきった。
最後にアルプススタンドの応援団の前に整列した際も彼らは笑顔に溢れていた。
この時、後輩たちの笑顔が溢れているのを見て、負けた悔しさは消え、晴れやかな気持ちになった。
後輩たちみんな甲子園で野球楽しめて良かったなって思えた。
「今までの野球人生のなかで一番楽しい時間をここ甲子園で過ごせたんだろうな。」
そう思えた。
清々しかった。
甲子園の土をかき集める時もみんな笑顔だったと報じられている。
しかし、登板した2人の3年生ピッチャーは涙。
それまで笑顔だった他の選手も最後に甲子園を引き上げる間際にグランドで整列した時に涙が込み上げ号泣する者が次々出てきたそうだ。
最後まで笑顔だった彼らが甲子園をいざ去るという最後の最後に号泣。
これで高校野球を引退するという現実に気付いたのかもしれない。
そしてそんな時に涙を堪えて「最後ぐらいピシッとせえやぁ」と仲間を鼓舞する声が聞こえたそうだ。
立派な後輩たちです。
初めての甲子園で見せた振る舞い、ほんと凄いわ。
野球の技術以上に野球人としてあるべき姿を教えられてきたのだと思う。
高校入学してから過ごした2年半の充実ぶりが伺える。
ネットでも彼らの甲子園での姿、行動を賞賛する声を多数見受ける。
センバツ21世紀枠の地区代表校で選考されず夏に自力で勝ち抜いて甲子園に勝ち上がってきたのは過去に例がないはず。
この日の試合を見た人の中には、
「21世紀枠の選考委員はこの高校を21世紀枠で選ばなかったのは大きな間違い。このチームこそ真の21世紀枠にふさわしいチームだ」と讃えてくださった方までいる。
文武両道。
練習時間は1日2時間。
卒業生の2/3は国公立大へ進む。
負けた翌日から受験勉強に必死になる彼ら。
母校を初の甲子園に導いた彼らならこれから何でも出来るだろう。
彼ら後輩たちのおかげで母校への誇りを感じることが出来た。
母校の誇りを見に全国から集まった多数のOB。
「応援しながらが応援されてた」
選手だけでなく応援するOBたちもみな同じように甲子園で「最幸の時間」を過ごしたに違いない。
自分も間違いなくその一人。
甲子園に連れてきてくれたこと、
高校野球が高校野球として存在すべき姿を見せてくれたこと、
後輩たちに感謝したい。
そして、来年こそ甲子園で校歌を響かせてもらいたい。