以前一人暮しをしていた頃の話です。


夜中になると、窓の外から
ヘンテコな歌声が聴こえてくることがありました。
曲はB'zのUltra soulです。


住んでいた部屋は角部屋だったのですが、
ベランダ側の窓ではなく
壁側の小窓から聴こえてきたので、
歌声の主は隣の部屋の方ではありません。


上の階の方か、下の階の方か?
はたまた、道路はさんで向かいの建物の人か?
いったい誰なんだろう?と思っていました。


ただ、初日はまぁ……良かったのですが、
連日リサイタルが続くにつれ
仏のような私(え!?)もイライラが募るようになりました。


こんな時間に大声で歌うなんて…
うるさくて眠れないし、毎日なんなのー!
しかも、音程はずしまくってる!
「Ultra soul!ヘイ!」じゃねーよぉ!
B'zにあやまれーーー!!
…と、姿の見えないジャイアンに
心の中で数日間イライラしていました。


ですが、ふと気づきました。


歌っている人を突き止めたとして、私は何がしたいんだろう?と。
「うるさいです」って伝えたい?
「深夜は静かにしてほしい」ってお願いしたい?


うーーーーん。
それ、、、ちょっと怖い。
そんなことしたくない。


その時、ひらめきました。


ひとまず私は
「あなたの歌が、こちらまで聴こえていますよ」というのを、私だとばれないような形で伝えられればそれでいい。
歌っているということは、その人はたぶんご機嫌なんだろう。
だからこのまま、うるさいとかは一切言わず
事を荒立てない形で「聴こえてますよ~」ってことだけ知ってもらえれば、とりあえずそれでいい。


そうして迎えた翌日。


例によってUltra soulリサイタルが始まったときに、
私もこっそり窓を全開にしました。
そして、その方のUltra soulに合わせて
一緒にノリノリでUltra soulの口笛を吹きました。
その人の歌い方に合わせて(歌い方の癖は熟知)、テンポとかタイミングとか、しゃくりあげるところとか、バッチリ合わせて。


気持ちはまさに、
一緒に楽しくセッションしようぜー!!!
です。


そしたらね、止まりましたよ。
翌日から、見事に何にも聴こえなくなりました。


静かな夜は、やっぱりすごく幸せでした。笑



相手に嫌と直接伝えるのって勇気がいるし、
もしかしたら危険が伴うこともあるかもしれないですよね。
でも、やっぱり我慢はストレスになるから、
嫌と伝えないままで自分も我慢しなくてすむ方法を
考えてみるのも一つの手だな、と思った出来事です。


…まぁ、私的には深夜に歌が聴こえなくなってハッピーでしたが、
他の人から見たら、
「セッション参加したとたんにフラれた
かなりイタイやつ」
なんですけどね!笑