私に出来ることは、安静にすることだけ。
エコーと胎児心拍と内診。朝と昼と夜に。
あとは特に何もない入院生活。
緊急帝王切開になる時
・おしるし、出血
・破水
・陣痛もしくは、頻回な張り
今のところどれもない。
残便感が取れないので、ベッド上で浣腸処置を、してもらった。もう恥じらいなど、とっくに捨てた。
今は早産回避が最優先。
毎朝、様子を見にきてくれる主治医。
今日は休日当直。
気になる妊婦がいるから当直代わってもらったのだとか。私のことですかね。
先生とは、いろんなことをお話してきたね。
中絶をするのは先生も辛い?とか。
産婦人科医をしていて悲しいことは?とか。
どうして産婦人科医を目指したの?とか。
やっぱり、不妊治療中の方へ、初期流産宣告をする時が一番辛いと。そうなんだね。先生も辛いんだ。
そのあとに、初期中絶を行う時は、無心になると。
あと、吸引分娩で痣が出来たり、子供に障害があると、すぐに訴訟を起こそうとする両親が時々いると。みんな、受け入れられずに、誰かのせいにしたいんだよね。
違う病院なら…
違う先生だったら…
そうじゃなくても、そう思うしか、受け入れられないよね。
四肢欠損や脳性麻痺、ダウン症、誰のせい?
羊水塞栓症、臍帯真結節、胎盤早期剥離、誰のせい?
誰のせいでもないのに。
他人事じゃないのに、まさか自分に起こるなんて。
そんな思いで、先生方を責めてしまうのかな。
そんなことを思っていたら、先生の緊急ピッチが鳴った。32週の逆子、切迫入院患者が破水したと、ピッチから声が漏れ聞こえてきた。
オペ室、麻酔科コールで。
と、急に真剣な顔になり、一礼して出ていった主治医。
ドアの前で、振り返り、りささんよりも、子宮口も子宮頸管長も、軽症の妊婦さんだったのにな…
なんて言い残して去っていった。
それはつまり、明日は我が身、覚悟しなさいよってことだよね。
出産は予測不可能。
どうか緊急帝王切開、母子共に無事でいられますように。どこの誰かも知らない電話越しの妊婦さんを案ずる。