両親に会いに行った旅行から1日おいて、急遽黒様の実家に行くことになった。


坊や達は安全の為に保育園へ。今回は同行させなかった。黒様に身体的虐待を加えた親だから。


長女は絶対に自分も行くと言って聞かないので学校終わりに連れて行くことにした。


午前中の間に高級そうな手土産をハムちゃんに用意してもらった。


ハムちゃんに事前聴取。


黒家どんな感じ?


「それがさぁ、行ったことないのよ。」


え?両親への挨拶とかないの?


って一瞬なったけれど、何となく事情は察する。我が家と同じ普通の家庭ではないのだろう。


自分の毒親に会わせるのはとてもプレッシャーだったし覚悟が必要だった。でも今回は義両親に会う立場…


これがもう妄想とドキドキが止まらない酔っ払い


どんなひどい目に合うだろうか、どんな冷たい言葉を浴びせられるだろうか。


我が家とどっちがマシ?


黒様に聞いても表情は固く話してくれない。


ついて行く方は気楽なものだ。


イタリアンな豪邸を想像していたら、日本庭園の旅館みたいなところだった。


スーツの執事がぞろぞろ来るかと思ったら、女性のハウスキーパーが1人だけ。


黒様が何かを小声で伝え、広~~い玄関で待機。


動物の剥製とか、謎のツボとか、高そうな置物が置いてある。


質屋に持って行きたい衝動に駆られる。


ハウスキーパーさんは戻ってきて、黒様へ何かを伝言。


そのやり取りが何度かあったあとに、母親には面会を拒否されたこと、父親は他界していて仏壇へも通してもらえないことが告げられた。


自分の家なのに、玄関から先へは通してもらえないなんてね。


そのあとは土地管理の事などをハウスキーパーさんを通じてやり取りしていた。


ぼーっと玄関の置物を見学していると人の気配が近付いてきた。


奥から出てきた女性は、姉だと言った。


無表情のまま、敬語で話す黒様と姉様。


私と長女の存在など見えていないようだ。


興味もないのだろう。


弟姉や家族の空気感はなく、まるで事務手続きのような冷たさがあった。


母様に会うことは諦めて、日本庭園を歩き、門を抜けようとしたところで呼び止められた。


白髪のお婆さんが現れた。


うちの母親に負けないぐらい不機嫌を貼り付けたような顔をしていた。


何歳なのだろう。80ぐらい?


「こんにちは。はじめまして。黒様の再婚相手の…」


バサッ!!


大量の白い物体を投げつけられた。


2度、3度…


バサッ!バサッ!


コノヤロー…砂かけババァかよ真顔


正しくは塩かけ老婆だ。


ボーイズを連れてこなくて正解だった。


長女は笑っていた。どっちの親も散々ねって。


帰ろう帰ろう。


本当に、G先生親子と正反対過ぎて笑える。世の中不公平じゃない?


ねぇ、いつもこうなの?黒様に聞いてみる。


「コスプレとか起業とか訳のわからないことをしているから嫌われてる。一家の恥だと。」


コスプレとか起業とかナンパとかパンダ製造とかね。


兄弟は何人?父親はイケオジだった?


教えてくれないのね。


何か突然閉ざすよね。


全てを知りすぎる関係より、どこで何をしているかよく分からないコスプレおじさんぐらいでいいけど。


私が両親に会いに行ったのを見て、自分も親と和解しようと思ったのかな。


世の中にはどうにもならないことがあるよね。


親は選べない。他人は変わらない。


あ、手土産渡すの忘れてた。


落ち込む黒様に笑いを届けようと、来た道を数メートル引き返し砂かけババァを呼び止め「つまらないものですが、良ければ!」


貧乏そうな娘ね!


汚ならしい!


二度と来ないで!


とか言われる?酔っ払い


ほらほら、もっと頂戴、暴言ラブラブ


期待の目でワクワクしながら見つめてみたけれど、手でシッシッと追い払われて話してももらえなかった。


黒様に引っ張られて豪邸をあとにする。


用事が終わったらお腹がすいたと言う。


激甘スイーツに連行される。


私はお腹がアレだから、スイーツは苦手なんだけどな。


長女が嬉しそうだからいいか。


晩御飯食べられなくなるから、少しにしてね。


「黒さん、大人だって泣いてもいいんだよ。」


長女がそう言うと、黒様は静かに涙ぐんでいた。


大きな身体と怖い顔に似合わず、ちいかわと抹茶を愛するかわいい人。


ねぇ…抹茶ってさ、ヤギとか羊が口をねじ回しながら草をハムハムしている時に漂うあの匂いがしない?


しないよって笑っている。


その姿が少しだけ愛おしいと思った。








愛は泣いていたんだろう♪

秘密の場所で

答えはないと知るだろう

空の向こうで…