頭からモヤモヤが出てるよ
夫に言われ、日向の窓際に座らせられる。
鬱々オーラが分かるみたい。28年間一緒にいるからね。
あ、間の2年は一緒にいないから、26年だね。
長い付き合いだね。
隣に子供達が来た。
3人で日向ぼっこ。
夫は黙々と掃除機を掛ける朝。
私が鬱々している時は太陽の光に当てると良いと信じている夫。放って置いたら、カーテンを閉めきった真っ暗な部屋で永遠に心閉ざしているから。
面倒な妻です。
自覚しています。
空気の読めない夫と面倒な妻。
何にも面白くない平凡な我が家。
掃除が終わると夫も日向ぼっこに参加。
娘が聞く。
ママは私のこと好き?
うん、好きだよ。
ママは弟くんのこと好き?
うん、好きだよ。
ママはパパのこと好き?
…普通かな。
これ、答えにくくないですか。
パパはママのこと好き?
娘は無邪気に謎の愛情確認の質問を続ける。
大好きだよ
何の躊躇いもなくそう言える夫が凄いと思う。私は言えない。
いつからママのこと好きなの?
もういいよ、その話。
娘の会話を遮ろうとする私。
娘ちゃんと同じ歳の時から、ずっとママのことが好きだよ
子供の前で何を言っているのでしょうね。
どうせ、目の奥が死んでいたとか、可哀想だったからとか、笑わなくて、臭くて、汚かったから、同情しただけでしょ。
違うよ。
ママが公園で鳩にエサあげてて、優しい子だなって思ったんだ
はじめて聞いた。
そうだったんだ。
学校のウサギや鶏の世話もしていたよね。
ママは動物に優しい。
そうだね。
動物や植物は人を傷つけないもの。
人間は嫌い。嘘を付くし平気で人を傷つける。
お昼ご飯何食べようか。
夫が尋ねる。
たこ焼きがいい
娘が答える。
たこ焼きのタコが嫌いな娘はいつもタコだけ器用に取り出して、私のお皿に移す。
それじゃ、粉焼きだよ。
夫の見ている景色はいつも明るい。
私の見ている景色はいつも靄が掛かっている。
日の光を当てたぐらいじゃどうにもならないんだよ。でも、いつもありがとうね、夫。