友だちが亡くなったことを知ったばかりでこれを書いているので、ちょっとまとまらないかもしれません。
自分自身の気持ちの整理もかねての文章になります。
お役に立てることは何もないだろうけど、お付き合いいただける方はお願いします。
★★★
同じ年の友人が2日前に自死したことをさっき知った。
私は彼が亡くなる一週間前に、たまたま会って少し立ち話をした。
彼は小学校の低学年の頃すぐ近所に住んでいて子供会でも一緒だったし、その後私は引っ越して中学も別々だったのに高校が同じで2年間も同じクラスにいた。
彼はゲイだった。
カミングアウトしたのはきっと大人になってからだろうと思うけど、子供の頃からちょっと変わっていたし、それで周りにもあんまり友だちはいなかったと思う。
高校では芸術クラスで一緒だったので、多分ほかのクラスよりはまだ個性を受け入れられやすかったかもだけど、やっぱり浮いてはいた。
私は昔から変わらない感じで接してたけど。
呼ぶときも下の名前を呼び捨てで。
向こうも私を、もう誰も呼ばない子供の頃のあだ名で呼んでいた。
高校の頃、彼はよく教室の後ろで歌ったり踊ったりしていて、私はこっそり小説を書いたりしていた。
初めて書き上げた小説を彼にも読んでみてと渡したら、授業中に読んで号泣していた。
それから何十年も経って、一昨年ひょんなことから彼の家に旦那さんも一緒に遊びに行ったときまだその小説のタイトルを覚えていて、「あれは名作よ」と言ってくれた。
2年前のその言葉以来、あの小説をもう一度きちんと書き直そうと思っていたのにまだ手をつけていない。
彼は若い頃生死の境をさまよって、それ以来不思議なチカラを身につけた。
それまで彼は芸能の仕事をしていたけれど、その一件以来不思議なチカラを使って祈祷したり占ったりを生業にするようになった。
元々芸能の世界に居たこともあってか、大手の事務所にも所属してアイドルやお笑いの人とテレビ番組に出ていたこともあった。
有名人との交流もいろいろあったようだし、占いの仕事も順調だったと思う。
私から見れば高額に思える占いの講座もいつも満員御礼になっていた。
それでも寂しかったんだろう、と今はよくわかる。
2年前に彼の家に旦那さんと行ったのは、私のパート先にたまたま彼が客としてやってきて再会し、「Macの使い方がわからないから教えて」と言われたからだった。
実は旦那さんも高校の同級生で仕事でもMacを使ってたから、教えに行くことになった。
私は渋々だったけど、優しい旦那さんが「困ってるなら行ってあげようよ」と言って。
彼は食べきれないほど手料理を用意して待っていた。
そして次から次にお酒を出してきて酔っ払い、結局ほとんどMacの話は出来なかった。
とても楽しそうに見えたし、旦那さんも楽しそうだった。
私もホントは楽しかった。
今、その時のことを思い出して、なんであのとき素直に「楽しかったからまた一緒にご飯食べよう」って言わなかったんだろう、と悲しくなる。
そういえば亡くなる一週間前に喋ったとき、「自分のことは占えない」と言っていた。
彼は2年前にお母さんを亡くしてから実家に一人で暮らしていた。
最寄駅からすぐの便利なところにある立派なおうち。
少し前大寒波がやってきたとき、家の水道が凍ったとSNSに書いていたからその話をして、「そんなに不便ならあの家を売って引っ越せば?」と言ったら「あんな家誰が買うのよ!」とキレていた。
「あんな便利な場所にある家、売ろうと思えば売れるんちゃう? 時間は多少かかるかもしれんけど」と言ったら、少し考えるそぶりを見せた後「そんな先のことなんて考えられないのよ」って言ってた。
こんな風になるとはもちろん知らなかった私は、「それこそ自分のことを占ってみれば? どうするのがいいか」って言ったら彼は「自分のことはわからないのよ」って言ったんだった。
あの日、実は私は別れ際「今度ご飯でもまた」って言おうと思ったのに言えなくて、「まぁ、また今度」と曖昧な感じで別れた。
ご飯の約束でもしていたら、少し未来は変わっただろうか。
私が彼と再会後にあまり近しく付き合わなかったのにはわけがある。
実は私には彼がとても淀んで見えていた。
SNSでは楽しげなこと、自虐的に笑いをとるようなこと、前向きなスピ的話題、有名人との交流や手の込んだ手料理の画像などを発信していた彼だけど、プライベートで見る彼は私には何か「重く」見えていた。
いつも何かを疑って怯えているようにも見えた。
正直に言うと、私は彼のその「何か」に影響を受けるのが嫌だった。
何も気づいていない旦那さんが巻き込まれるのはもっと嫌だった。
だから積極的に自分から彼と接触しようとしなかった。
実際、一緒にご飯を食べたとき彼自身にも言った。
「あんたはすごく淀んで見える。他人のお祓いをする前に自分を浄化した方がいい」って。
彼はどう答えたんだったか・・・思い出せない。
でもそう言われても怒りはしなかった。
多分、人の祈祷をしたり占ったりすることで、自分はいつも奪われていくばかりだ、というようなことを話していた。
プライベートでは悪態をついたり愚痴ばかり言ってた彼だけども、本当は優しかったんだろう。
優しいから全部受け止めて取り入れてしまう。
私は自分も占い稼業をするようになって、人さまの悩みごとを仕事として聞くというのがどういうことか身をもって知った。
だからこそ長年その仕事をして、それも私なんかよりもずっと量が多く、内容も濃い相談をこなしてきている彼のことを単純にすごいなと思っていた。
でもやっぱり、と思ってしまう。
実は私の元には、「自分も占いの仕事がしたい」とか「人を癒す仕事がしたい」という方からの相談が多い。
そういう人には必ず「悩みごとを聞くことになっても決して受け取って自分の中に溜めていかないで」と伝えている。
数秘術で共感しやすそうな数字の人には特に念入りに伝える。
自分が占い稼業を齧ることになって感じるのは、占い師に向くのは「境界線を設けられる人」だろうってこと。
占い師と依頼者の間にテーブルを置いて、そこに悩みごとを吐きだしてもらって、話している間にそいつをポジティブな形にして返すか浄化して消してしまうか、どちらかの手法がとれること。
占い師の仕事は依頼者が抱える荷物を肩代わりすることではないし、影響を受けることでもない。
それを自覚して境界線を作れること。
今のところ私は出来ているつもりだけど、優しすぎた彼には出来なかったのだろうか。
いつも冗談っぽくパートナーが欲しいと言ってた彼。
下ネタばかりでめんどくさかったけど、本当は色恋ばかりじゃなく信頼できる人にそばにいて欲しかったんだろう。
私にも「マネージャーになって」なんて言ってたな。
信頼されてたかどうかはわからないけど。
占いの世界では大先輩で実績も私とは段違いだったから、まさか彼を占おうとは思わなかったけど、今初めて見た彼の数字は5/8/3
やっぱり身近に彼を甘やかしてくれる誰かがいたらなぁ、と思わずにいられない。
彼が欲しかったのは仕事の成功でもお金でもなかったんやろなぁ、と。
もっと占いのこととか話せばよかったんやろかと思う反面、やっぱり彼が背負っていた「重い何か」がある限り私は近づけなかっただろう。
いずれにせよ、私は私のできることをして私の人生を楽しく豊かに過ごすだけ。
きっと彼は彼なりに自分の人生を生ききった。
「アホか!」と言いたいけど、今は「お疲れ様」とだけ言っておく。