170回
このブログは何だ?と思う方は、2024年12月3日付の第1回をお読みください。
P.69~70
第3章 人の有するものについて
「困窮に悩んでいてしかも欲望の塊みたいな人類の一員として生きるからには、富が何ものにもまして率直に注目されること、いや注目されるというよりはむしろ率直な尊敬の的となり、権力までが富の手段となることは、怪しむに足らない。また利益のためにいっさいのものがないがしろにされて放擲されること、たとえば哲学が哲学の教授と称する輩に荒らされることも、怪しむに足らない。人間の願いが主として金銭に向けられ、人間が何よりも金銭を愛することに、しばしば非難が加えられるけれども、いついかなる時でも変通自在にわれわれ人間の千変万化の欲望と千変万化の欲望とその時々の対象に早変わりする金銭を愛することは、自然の勢いであり、けだし避けがたいところでもあろう。というのは、他の財貨はどれを取ってみても、食物は貧しい人にのみ、酒は健康者にのみ、医薬は病人にのみ、毛皮は冬季にのみ、女は若い男にのみ、役に立つとしたもので、ただ一つの願望、ただ一つの欲望を満足させるだけだからである。したがってそれらはみな相対的に良いものというにすぎない。ひとり金銭だけは具体的に一つの願望だけに合致するものでなく、抽象的に欲望というもの全般に合致するのだから、絶対的に良いものである。」
金銭は、絶対的に良いものである。