120年の歴史があるという田中貴金属工業の記事を紹介。
紙幣より貴金属がこれからより注目されてくる可能性があるだけに
ちょっと気になったので‥。すごいかも 貴金属加工の技術。


●貴金属加工、120年の技

幅5センチほどの細い合金に、
薄さ数マイクロメートルの貴金属が次々と張られていく。
高速コンベヤー上の作業はすべて、
機械によって目にも留まらぬ速さで進められていた。
田中貴金属工業(東京都千代田区)の岩手県内にある工場で製造されているのは、
携帯電話の部品である。
振動で着信を知らせるバイブレーション用の極小モーターに
電流を送るために使われるという。

その微細部品に張られる金などの貴金属は、
1日の製造分を合計すると延べの長さが数キロに及ぶ。
田中貴金属グループの年間売上高は約9500億円


宝飾品販売のイメージが強いが、実は事業の7割が貴金属加工で占められている。
携帯電話はもちろん、自動車、家電など生活のすみずみまで、
現代日本人は実は貴金属加工による微細部品のお世話になっているのだ。

田中貴金属工業は明治18(1885)年、
東京・日本橋の両替商としてスタートした。
買い取った宝飾品やかんざしなどを溶かし、
地金として売るようになったことから貴金属加工に進出。
いまでは張られる貴金属の薄さも、1日の生産量も、業界他社を圧倒する。
6代目の岡本英彌社長(50)は
「120年にわたって本業の貴金属加工業をひたすら追求してきたからです」
と胸を張った。

明治22年には、外国製の使用済み電球を電力会社から買い取って
フィラメントの白金を精製し、それを使って純度の高い電球用ワイヤを
作り出すことに成功している。白金加工の国産化は初めてだった。

貴金属は物質として安定性が高く、長年にわたって色や形が変わらない。
しかも、熱に強く、電気を通す特徴もあることから
明治以降の日本の工業化をさまざまな場面で支えてきた。

多様なニーズに対応し、接合や触媒、リサイクルなど
貴金属に関係するあらゆる技術の開発を求められてきたことから、
その技術はいまや、電子部品だけでなく、
医療や環境など幅広い産業シーンに応用されるようになっている。

現代の最先端機器の象徴である携帯電話には、最初に紹介した貴金属の
張り合わせ技術のほか、CCDカメラのワイヤに使われる極細線の加工技術、
フラッシュメモリー用の金メッキ術など、
数えていけばきりがないほどの技術が駆使されている。

「社歌にうたわれた『本業に特化し、発展させる』精神を120年間守ってきた」
と岡本社長は語る。本社特別応接室の前に、その社歌が掲げられていた。

「科学の波にさきがけて」「究(きわ)め究(きわ)めて 比類(たぐい)なき」

限られたエネルギーを本業である貴金属加工につぎ込み、
研究のための先行投資や技術開発に人材と資金を積極的に投じてきた。
岡本社長によると、明治期には海外から技術者を呼び寄せ、
1泊が社員の年収分に当たる高級ホテルに何カ月も泊まってもらい、
技術を吸収したという。

現在も貴金属をテーマにした研究を公募し、
優れた提案には年間500万円を助成する。
“得意技”に特化した技術で需要に迅速に対応する能力を常に蓄えておく
老舗戦略が、結果として「取引先は現在、日常的なものだけで3000に上る」
という顧客からの高い信頼につながっているようだ。

すごいぞ日本 産経新聞