(ルチアーナ筆。)
我が国が世界に誇る名ピアニスト 内田光子女史の弾き振りによるモーツァルトのピアノ・コンチェルト演奏は全曲に渡って実施されライヴもレコーディングも最高水準で先年完結した。私は それ以前に かつてジェフリー・テイト指揮によるイギリス室内管弦楽団をバックに内田女史がスタジオ録音した同曲のCD全曲を所有しているが、これらの演奏も 新たな弾き振り演奏に比しても全く聴き劣りのしない。実に見事な出来栄えを誇るものとして高く評価されている。そして今回は映像も含めた総合的な見地から 今や押しも押されぬピアノ界の大家たる地位を不動のものとした女史の完璧とも言える【孤高のモーツァルト】を目の当たりして そこに醸し出される音楽のこの上ない美質に 暫し 声を失う程の感動を新たにしたところである。とにかく内田光子女史の奏でるピアノの音の何んと美しい事か…!。まるで竪琴【ハープ】を聴いている様だ。繊細、優美、華麗、品位の高さ。如何なる言葉を幾つ重ね合わせてもまだ足りぬ程 女史のモーツァルトは絶品である。東洋人が しかも日本人が これ程ウィーンナイズされたモーツァルトを奏でるとは もうこれは【神技】である。ここで提示するD-mollのコンチェルトはモーツァルトの一握りしか存在しないマイナーコードの作品であり、特に名作の誉れ高い美曲である。微動だにしない内田光子女史の安定したピアニズムとオーケストラを自在にコントロールする音楽的手腕を共に心行くまで味わって頂きたい。「あぁ〜何んと素晴らしい演奏なのだろう。感嘆・感動の溜息が思わずついて出る!。」それのみだ。