(ルチアーナ筆。)
昨日、本年のインターナショナル・オーディオショーの会場【東京国際フォーラム】を訪れ例年通り各ブースを期待を持って回った。正直 今年の このイベントは 取り立てて私に新たな可能性を感じさせてくれる全く新しい要素技術が提示される事とてなく 比較的落ちついた様相を呈していた。これは ハイエンド・オーディオにおいてほぼ その技術的枠組みが今や出揃った感を強く印象付けると同時に 今は各メーカーごとに それらの素性を如何に高度に成熟させていくかに戦略的コンセプトが移って来ている事かを端的に物語るものでもあった。そんな中 昨今の経済状況から鑑み この度マッキントッシュの製品群が一斉に価格を下方修整させた事は ある種 特筆に値する情報だった。我が国では古くからハイエンド・オーディオの核ともなる地位を占めて来たマッキントッシュの製品は今やコストパフォーマンスと言う面においても格別な存在となった。そのゴージャスな鳴りっぷり、美観に富んだニュアンスそして製品としての信頼性 今アンプを購入するなら まさにマッキントッシュが一押しだ。スピーカーとの相性も頗る優秀、100%とは行かないまでもスピーカーの選り好みもまずはない。低感度のスピーカーにおいても 均一に定出力を確保し ふくよかに鳴らし切る。実に多様性に長けたアンプ、プリもパワーも魅力全開である。伝統のブルーアイも益々冴える。いや〜マッキントッシュは素晴らしい!その一言に尽きる。もう一つ面白かったのは2年半程まえに復活を遂げたテクニクス【パナソニック】である。インターナショナル・オーディオショー初参加となった今回、さすが国内メーカーだけありプレゼンにそつがない。特に新製品のアナログ・プレーヤーSL-1200Gのプレゼンでは製品のパーツを一つ一つ分解して来場者 個々に手で触れさせその精度の優秀さをアピール、こんな事は海外製品のプレゼンでは まずあり得ない。余程 物作りに対する自信がなければ不可能な取り組みであろうに…!。しかしテクニクスは難なくそれをやってのけた。また 再生された その音も実に見事であった。勿論、カートリッジやフォノイコ等々の精度との融合でそれはもたらされるのだが アナログ・プレーヤーは諸々応用が利く事、即ち 使い勝手において間口・奥行きが極めて広い事が非常に重要であるのだが この新しい機種には その対応力において 大いに期待を膨らませてくれる可能性を抱かせる感性の様なものを想起させるのである。高SNで情報量も豊富大変美しい音を醸し出す。久しく埋もれていたブランド、テクニクスが本腰を入れて作った真面目な逸品 それがSL-1200G.アナログ・プレーヤーである。この様に今年のインターナショナル・オーディオショーは地味といえば地味であったが それ相応に聴いて楽しい製品が数多く出品され我々ユーザーの耳を楽しませてくれた。多額の投資が必要なハイエンド・オーディオの世界、しかしそこには 言葉では言い尽くせない孤高の世界観が存する。音楽芸術の理想的な表現はオーディオにおいても又、無限の広がりをもつ。真に価値あるものをその高みにおいて評価せしむる事、その為の投資なら私は決してそれをためらう事をしない。その確固たる価値観を確信を持って改めて確認出来るイベントが このインターナショナル・オーディオショーなのである。本日で三日間の開催スケジュールは終了。又来年と言う事になる。心静かにオーディオ機器の前に身を置き、珠玉の名演を自ら構築した音によって理想的な形で再生する。その為の指針がこのイベントにはある。私に取っては毎秋、欠かせぬひと時と言う事になる。さて私の今後のオーディオライフは…?今日から又、新たに問い直してみようと思っている。