季節柄 この曲こそ”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
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加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
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チャイコフスキーの名作 【弦楽セレナーデC-dur】この演奏は小澤征爾が指揮したサイトウキネン・オーケストラの演奏であるが、時期はかなり前になろうと思う。近年のマエストロ 小澤は殆ど 指揮棒を持たずに 指揮する事がセオリーとなっているが ここではタクトを持って指揮している訳でしかも記録によればこの日は天覧コンサートであった様で 私も大概 今までのサイトウ記念フェスティバルの開催と年々による上演目は記憶しているのだが この日のコンサートに付いては記憶が欠落していて思い出せない。マエストロもまだまだ この時は若い!。近年の病がちでやせ細った姿に比すると その違いは歴然だ。しかし音楽の構成・表現の幅、それは現在の方が遥かにパワフルである。病を得て尚、マエストロの芸術はその全ての要素において只ならぬ飛躍を遂げている まさにそれが証であろう。…とは言え ここに提示した演奏が悪い訳では更々ない。マエストロが恩師 斎藤秀雄氏から受け継いだチャイコフスキーの極意をもう一回りも二回りも大きく展開し 優美でしかも艶のある最高のアンサンブルを創り上げている。今年もそろそろ秋めいて来た。人の心に落ち着きと安らぎを与える季節の到来に寄せて 【この曲こそ 季節柄】今最も心情にマッチする曲の様に私は思うのだが 諸兄は如何だろう。透明で涼やかなストリングス!。冷気にも似た清潔感溢れる 音楽的表情。チャイコフスキーの音楽はまさに珠玉の美的表現の宝庫である。これを先ずはお聴きになり続いてシンホニー、コンチェルト、バレエ音楽、オペラと鑑賞の奥行きを広げて頂きたい。そう念願してやまない。
(ルチアーナ筆。)
★特に第三楽章【エレジー】はたまらない!何んと美しい事か…!。
この日ご臨席の天皇皇后両陛下もまだお若くていらっしゃる。つくづく時の経つ事の速さを感じずにはいられない。
弦楽セレナーデC-dur ”。
《チャイコフスキー》。小澤征爾 指揮。
サイトウキネン・オーケストラ。