荘厳” マタイ受難曲。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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バロック音楽のまさに頂点に立つ音楽史上最大の楽聖J.S.バッハが創り出した崇高無比なる最高傑作。 キリストの受難の逸話を伝えるこの荘厳長大な伝承音楽はマタイ伝によるものと、ヨハネ伝によるものの二つが現在 バッハの真作として残され その双方ともが その傑出した芸術性において遥か宗教音楽の枠を超え聴く者の心を捉えて放さない。真偽のほどはわからないがバッハには 歴史の中で消失した他にマルコ伝、ルカ伝による受難曲が実は存在していたのではとの研究者の指摘もあるが、何せ現在 その楽譜が失われている状況では真実を確かめる術とてない。しかし近年モーツァルトなどの新たな真作楽譜が欧州の公文書館や図書館などの古い書庫の一角から見つかる等のケースもあり、これからも偶然 何んらかの形で古書資料の中から 音楽史上を揺るがす様な重大貴重な発見が成される可能性は充分あり得る事として認識しておくべきだろう。そしてそれがもしバッハの真作 マルコ受難曲”であったなら それこそセンセーショナルな話題となる事請け合いである。そして このマタイ受難曲!素晴らしい!キリストの生・神の啓示・迫害・裏切り・処刑・そして復活。深い信仰と人間愛、心の安らぎ 真の救い!。メシアに課せられた重き受難、試練の中から あまねく差し伸べられる【御手】の あらん事を伝道する壮大な宗教音楽の金字塔!
バッハの創造した音楽によってのみ表現し得た究極の【魂の言葉】が 全曲に網羅されている。あらゆる意味で音楽芸術の到達点を誰しもがここに見る事になるだろう。ひとたび耳にすれば この世界観から容易に遠ざかる事は出来ない。紛れもなく神聖にして汚れなき純芸術とはバッハの描いた
この場面にしか恐らく存在しないのでは無かろうか。我々はしかし これを存分に享受すべきだ。この世に【生を受けた者】として…。
(ルチアーナ筆。)
J.S.バッハ” マタイ受難曲。