ヘルマン・プライの魅力”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

D.F.ディスカウと並び戦後 ドイツリート歌唱における その芸術性の妙を極限までに高めた功績の一つは もう一人のバリトン 、ヘルマン・プライによって成されたものである事はこれも又 周知の通りである。ディスカウより4つ年下の彼は同じドイツのバリトンでありながらディスカウとは明らかに色彩の違う まるで万年青年の様な動的でラフな歌声を生涯を通して聴かせたものだ。ディスカウが年齢を重ねる毎にまさしく【神業】の域に達する【孤高の芸術性】を示したのに対しプライのそれは実に人間的かつ開放的で場合によっては時として粗野に聴こえさえする 良くも悪くも 肌あいと近親感に溢れていた。透明性より濃度で聴かせる その歌は 我々が受け入れるに実に容易い。又 声の美しさは まさに比類がないものだった。私はかつて 初めて彼の歌声を聴いた時 俄かにこれが人間の生み出す【声】というものかと信じられない程の衝撃を受けた覚えがある。それ程に類い稀な美声である。ディスカウの技に対してプライは自らの声の持つ【生粋の美】でリートの世界観を描き切った。戦後のドイツ・リート構築の立役者だったディートリッヒ・フィッシャー・ディスカウとヘルマン・プライ この世界的二大バリトンも残念ながら最早この世にはいない。
(ルチアーナ筆。)

★得意としたシューベルト、
本の僅かだが お聴きあれ。
これだけ聴いただけで彼の歌声の魅力を
堪能出来る。