ミュンヘン野外ライヴ”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
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年明けを飾る数多の音楽番組の中にあって私に最も大きなインパクトを与えてくれたのが元旦WoWoW.ライヴでオンエアされた【スリースターズinミュンヘン”】であった。新春を彩る優雅なひと時と言うイメージには打ってつけのこの野外コンサートはネトレプコ・カウフマン・ハンプソンを格に各声域の今や第一人者が集う現在望みうる世界最高水準のクラシック・ガラであり、まさに最初から最後まで息をもつかせぬ程の名唱のオンパレードであった。実のところYouTubeなどで今コンサートは先行してその断片を視聴する事が可能ではあったが、やはりTVである程度音質的クォリティを確保して聴く事で質的不満は払拭されライヴ全体のイメージは格段に向上する。そうした中で改めて聴く今回の機会は誠に充実の極みであった。広大な野外環境そのものが果たしてこの様な形式のコンサートに必ずしも相応しいがどうかは恐らく賛否が分かれる所であろうが、やはり現在当代きってのその実力を自他共に認める名歌手達がステージの正面に立って【無類の美声】で競演してみせる様は実に圧巻であった。陽の光が高く降り注ぐ内から、それが夕陽となりやがて黄昏る。周囲の闇に包まれつつもコンサート会場の熱気は益々ヒートアップ。聴衆の感動の息吹にその場の空気感は増幅の一途をたどって行く。その一連の経緯がモニターからもはっきりと見て取れる。こうしたコンサートこそまさに音楽芸術の質的要件を十全に維持し且つ、オーディエンスに精神的なゆとりを与えクラシック音楽の又は歌唱芸術の魅力的価値を完全な形で提示出来る最上のステージと言えるのではなかろうか。先に論評した【NHK・ニューイヤーオペラコンサート】もこうした番組構成を取ってくれていたなら充分に評価に値する筈だったと思えてならない。そしてこうした決定的な質的差異はコンサートの規模の問題ではなく、やはりクラシック音楽の普及定着を目指す意識上の捉え方の違いがその現況にあり、それが明らかに【品位】のあるものと勘違いの【肩のこらないクラシック?】と言う
言葉は悪いが【下品なおふざけ】との決定的分岐点となってしまうのである。数多のそして世界屈指の名歌手の持ち味を遺憾無く発揮させ尚且つ、芸術としての品位を汚さず同時に当然ながらオーディエンスに最高の【美・感動】を提供する。それは決して簡単な事ではないだろう。しかしそれを
【やらねばなら無い!】今回の公演【スリースターズinミュンヘン”】のオンエアはその手本を我々に明示してくれた語り継がれるべき【名舞台・ステージ模様】であった様に思えてならない!。重ねて言う!。【素晴らしい歌声】、【見事なステージ】であった。
(ルチアーナ筆。)