(ルチアーナ筆。)
昨日のコメントで私はF・レハールのオペレッタ「ほほえみの国」からアリア【君は我が心のすべて”】について、その魅力を述べたが、その後改めてこのアリアの古今の名唱をもう一度探ってみた。先述したプラシド・ドミンゴの名唱を筆頭に古くはあの悲劇の名テノール、フリッツ・ブンダーリッヒのはつらつたる美声を久々に耳にして深い感銘に浸たり、暫し時間の経過も忘れる程であったが、そんな中現在最も活躍の目ざましいテノールの一人ヨナス・カウフマンの歌唱は今まさに我々がリアルタイムで聴ける最も優れた歌声と言っても過言ではあるまい…っとつくづく思った次第だ。端正な面持ちとスタイリッシュな容姿にオペラ歌手としての又は演じ手としての資質を充分に持ち合わせているのもさる事ながら、何んと言ってもその歌の魅力たるや今まさに他の追随を許さない世界最高水準にあると言えるものだ。YouTubeでも拾えるのでお聴き願いたいが彼が恐らくウィーンの社交界デビューを飾る少女達の舞踏会にゲストとして招かれた体でシュターツオーパーの場内で歌ったこのアリアの歌唱は聴く者の全てを魅了して止まない最高峰の歌唱である事に間違いはない。モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンを始めとして祖国ドイツの作品群はもとよりヴェルディ、プッチーニに代表されるイタリアオペラ、はたまた壮大なワーグナーの世界観、マスネ、グノー等のフランスの諸作品。何を歌わせても世界一のパフォーマンスを展開出来る天才歌手。それが今のカウフマンの代名詞である。私は正直な所、このF・レハールの名唱を持ってしてのみにおいても彼の世界的評価は不動であると確信する。オペラ界も若き才能の台頭が顕著ではあるが、今現在やはりテノールの領域においてヨナス・カウフマンは唯一無二とは言わない迄も先陣を切って歩む存在である事は疑い様のないところだろう。私はこの一から十まで全てを持ち合わせた世界で最も優れた歌い手ヨナス・カウフマンにオーディエンスとして心のからの敬意を持って接し様と思う。実に見事!その歌唱には100%【脱帽!】である。深い感銘と共にヨナス・カウフマンは必ずや演奏史にその名を刻む事!相違ない。