ラフマニノフ”ショパン”スクリャービン。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

言い忘れた事がある。
先日の伴奏者との共演は私の声の
調子が【良いの悪いの】と言う
話一色になってしまったが、
実は前段に別の企画があった事を
記すのを忘れていた。それは
若き私の伴奏者が私との練習を
前に当教室のレッスン生の
子供達や親御さん達の為に
彼が最も得意とする
後期ロマン派から近代作品に至る
数曲のピアノ独奏曲を
眼前で披露してくれたのだ。
ちょっとしたサロンコンサートと
言ったところだ。それは
たかだか30分程の時間だったが
充実した時間を、演奏を、
繰り広げてくれた事に今、私は
改めて厚く感謝している。
まだ弱冠19歳の
好青年が醸し出す生き生きとした
しなやかなピアノの音色は
音楽の全体像を専門的観点から
見れば、それはまだ諸々評価の
分かれる事もあるやに
思うが、あくまでも
瑞々しく豊かな音場を
呈し、やはり実に清々しい限りだ。
若いと言う事は芸術の解釈に
おいて色々と弱点を指摘される事が
常ではある。しかし反面そこには
底知れぬ未来に向かっての
壮大な可能性が秘められている事も
疑い様のないところだ。
そして彼の演奏もまさに、
その渦中にある。ラフマニノフの
【鐘】に始まり、ショパン、
スクリャービンと進む。これらの
曲は、昨今フィギュアスケートの
演技で日本男女の有力選手が、
スケーティングプログラムに
使用した事でも知られる
珠玉の名曲であるが、いずれも
雄大にして、かつ繊細な詩情をも
秘めた極上のピアノ曲の数々、
万人の心を最上の【美】へと
誘ってくれるに充分な作品と言える
ものだ。日々の修練の傍ら
益々充実した演奏活動にも
しっかりと傾注し、芸術の本質を
深く掘り下げて理解する事には
並々ならぬ意欲に満ちた勉学を
しかも時間をかけて行う必要が
ある。それをこそ彼が成し遂げる
時、真のピアニストの誕生と
なるのだろう。リサイタルでの
共演はこれが最初で最後だろう。
私も努力を重ねる。
そして二人で最高の芸術的空間と
時間を構築したい。
そして、その時は今、日々刻々と
迫り来ているのだ。
あと7ヶ月…。気が付けば
「あっ」…っと言う間に違いない。
一日も早くコンディションを整え
私も勉強を再開しなくては…!。そう、
ドクターストップの解除まであと
二日なのである。
(ルチアーナ筆。)