マエストロ健在にて”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

小澤征爾。日本の生んだ世界的
指揮者の彼が数多の病魔との
戦いに、き然と立ち向かい、
それらを克服まだまだ無理は
出来ない状況である事は承知だが
やはり、その指揮台での立ち姿を
我々の前に披露してくれた事は
誠に喜びに絶えない。
本日(3/16)21:00から
Eテレで放映された
水戸室内管弦楽団のコンサートの
模様はその彼の指揮台での勇姿を
改めて神々しく描き出し、
息つく暇もない程の音楽的緊張感を
醸し出すに充分で密度の濃い
番組でありオンエアーであった。
あれだけの大病を克服し
著しい体力の低下を招くも
そのバトンさばきに衰えを感じ
させない。何と言う集中力だろう!
このコンサートは前半の指揮を
ナタリー・シュトゥッツマンが担当
メゾ・ソプラノの名花として
名高い彼女の指揮姿も又、優雅で
新鮮、…っと同時に思ったのだが
世界的に活躍する名手を擁するこの
素晴らしい室内オケを実に見事に
統率、繊細かつ躍動的で柔らかな
美質に富んだメンデルスゾーンの
音楽感を実に端的に描き出して
いたのには些か驚愕した。
後半、小澤が指揮した
ベートーヴェンの第四交響曲との
芸術的融合性にも充分配慮した
卒のないプログラミングの妙も
感じさせてくれた。
こう言う音楽に身を委ね、
時を過ごす事は人として誠に
心地良く又、何より幸運な事だ。
特に私はメンデルスゾーンの
第四交響曲「イタリア」が
大のごひいき曲なので、
その想いは一入である。
そして小澤のベートーヴェン!。
繰り返すがその音楽的集中力は
尋常ではない。この精密機械の様に
全てを余す事なく自在に体現する
世界的にも稀にみる
この室内オケから
雄大華麗な色調をこれほど見事に
引き出し造形するとは、まさに
世界のマエストロ、
【小澤征爾ここにあり!】だ。
その健在ぶりは、この演奏に100%
凝縮されていると言っても過言では
あるまい。
コリン・デイビス、
ウォルフガング・サヴァリッシュ
クラウディオ・アッヴァード等、
世界の音楽界をリードした
マエストロ達が次々と世を去る中、
我が国の生んだ、孤高の指揮者、
マエストロ小澤征爾にはまだまだ
やってもらわなくてならない事が
山ほどある。
どうかこの健在ぶりが、一過性の
ものにならぬ様心から
願わずにはいられない。
小澤征爾指揮、ベートーヴェン作曲
交響曲第四番、変ロ長調op60。
この上ない名演であった。
(ルチアーナ筆。)