コンコーネ”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

声楽家に取ってベルカントを
学ぶ事は最もオーソドックスにして
最も重要な要素・課題なのだが
その難しさも楽しさも含めて
その世界に我々を誘ってくれる
基本教材がコンコーネの一連の
エチュードだ。
取り分け50番練習曲は歌を勉強する
上で、まさにバイブルと
言える価値ある教則本である。
当然ながら全50曲から成立している
この教則本、歌の勉強を始めると
先ず例外なく教師はこの教則本の
使用を指示する。そして私も
そのコンコーネを勉強し今また、
教え子に同じ様にコンコーネ50番を
もって基本的発声とレガート唱法の
重要性をアドバイスしている訳
である。このブログでも先述したが
ベルカントの持つ旋律美を充分に
満たし尚且つ、声のより美しい
フォルムを導き出す事に重きを
置けば、自ずとその難しさは明確と
なり第一曲目からその技術的要求
の高さはメロディー進行の
ワンフレーズづつの構成を見れば
すぐさま明らかとなる。
それがタイプの違い
を提示しながら50曲も続いて行く
のだから、その修練は生半可な
姿勢ではとても対応出来るものでは
ない。高等学校在学中くらいから
歌を勉強し始めた者が早々と
50番練習曲を読み切ってしまい
次から次へと25番或いは40番、
そして15番とコンコーネ教則本の
渡り歩きをする姿を垣間見る事が
あるが、私に言わせて頂けば
まあ~無意味とは言わないまでも
決してあまり合理的とは
言い難い事としか思えないのだ。
先ず50番練習曲集そのものが
先程来指摘している様に
かなりテクニカルであり、
その内容は歌を学ぶ者が、
より高度な音楽性を身に付けた
各段階においてもそれに
呼応した形で新たな
技術的要点を導き出せる実に
柔軟な内容を深く持ち合わせて
いるからで要するに50番練習曲は
何度さらい直してもその都度
新たな課題を我々歌い手に
良い意味で突きつけてくれる訳
なのである。私自身も現在数々の
作品をレパートリーに持ちつつも
又、リサイタルに向け勉強を重ね
つつも、何かテクニック的課題に
直面した時、決まって50番練習曲
の譜面を開く事にしている。
コンコーネ50番練習曲とは、
それほど奥深い音楽的・技術的要素
満載の教則本である事を
幾重にもご理解を頂きたい。
声楽家を志す者、歌の修練に絶対的
価値を持って臨む者に取って
その事はまさに普遍的な
意味合いを持つ。
平たく言おう。声楽家のレッスンに
必要なエチュードは
唯一コンコーネ50番練習曲だけ
と言っても過言ではあるまい。
このエチュードを本当にマスター
仕切ったなどと胸を張って言える
歌い手がいたら私はその人に
お目にかかりたいものだと思う。
何かあったら
コンコーネ50番練習曲へ回帰
すべし。そこに必ず
解決の糸口ありだ。
オペラのアリアを歌いつつ、
日々勉強の締めはコンコーネ50番!
そう!。それで良い…!。
少なくとも私は45年間それを
ベースに修練して来たのだから…!
その言葉に自信が持てない程
私も柔な勉強はしていない。
(ルチアーナ筆。)