戦後、日本の復興の歩みはアメリカの占領政策から一応の解放をみる昭和20年代後半からという事になるが占領軍の祖国アメリカ本土でもこの頃から戦勝祝賀の熱狂から人々の心も徐々に落ち着きを取り戻し同時に新たな東西冷戦の時代へと突き進んで行く扉が開いた時代と言う事が出来るだろう。朝鮮動乱からあの泥沼化したベトナム戦争へと悪しき階段を登り続けるアメリカのその不安定な社会状況の中、エンターテイメントの世界においては人と人が憎み合う事の不条理を見事に描いたまさにそのエンターテイメントの原点とも言われるミュージカル映画の最高峰が生まれる。言わずと知れた名作「ウエストサイド物語」がそれだ。1961年度のアカデミー賞はこの作品の独壇場となった。作品賞を始め主要10部門のオスカーに輝いたこの不朽の名作はナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、ラス・タンブリン等そうそう足る当時の若き名優が共演、現代版ロミオ&ジュリエットの熱き恋と悲劇を全世界を熱狂そして興奮に巻き込みながら描き演じ切ったのである。そして何よりもこの作品の要、音楽の作曲はアメリカが生んだ世界的マエストロ、レナード・バーンスタインが担当している。この事も特筆に価する出来事だ。クラシック界の天上に君臨した彼は同時に優れた作曲家であり指揮者であり又、超絶的テクニックを持ったピアニストでもあった。現代的手法と軽妙なニュアンス、オペラ並みに洗練された巧みなオーケストレーション、どこを取っても非の打ち所がない成熟の音楽。世俗的背景をスケール感と美しさを見事に融合させて聴かせる憎い程巧みな音楽に一度接すれば誰しも虜になって離れられなくなる事請け合いだ。「ウエストサイド物語」こそあらゆるジャンルを超えて我々が享受出来る現代の至宝である事は万人疑う余地はない。
私など、これを何度聴き、何度観たことか、にわかには思い出せない程のへビーリピーターになっているが当然毎回、同じ事の繰り返し…。しかしこれがたまらない。20世紀、映像の時代が最高の芸術を遥かに時を超え、私達を感動へと誘う。その有難さを知る為にも、まさかとは思うが「ウエストサイド物語」、観た事がないと言う人がいたら一刻も早くご覧あれ…。無教養の誹りを受けない為にも…。
(ルチアーナ筆。)
「この作品はつまらない所…皆無!
軽妙と美のオンパレードだ。
余りにも有名な、トゥナイト。
トニーの独白、マリア。
心ある者なら涙なくして聴けぬ
ワンハンド・ワンハート。
もう止めておく。言葉でいくら
語っても語り切れない。
とにかくウエストサイド…!
聴いて下さい。 観て下さい。
頼むから…!!」
☆1984年9月、レナード・バーンスタ
インは自らの指揮により世界最高
のキャスティングを得てこの作品
を改めてレコーディングした。
音楽を最重要とし、この収録は
全てオペラ歌手を起用、特に
マリア役のキリ・テ・カナワ、
トニー役のホセ・カレーラス
二人の名唱は歴史に刻まれる
最高の記録である。…と同時に
この記録はバーンスタインの
言わば遺言的孤高の
記録でもある。
こちらも是非ご一聴の程を…。
(CD通常版、SACDマルチ
ステレオ&2chステレオ版
有り。)